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マーヴが拘置所に送られた時、別の用事で関わっていた弁護士にちらりとそのことを話した。冷徹な法律サイドからだけの意見の中に、恋人に盲目になってしまった可哀想な女と思っているようなところが見え隠れしていた。わたしは違う、そう言いたかったけれど、そう叫んでみたところで世間の目には「うちの息子に限って」というお母さんなどとなんら変わりないのだろう。
信頼していた友人は、これから犯罪歴を背負っていくことになってしまうかもしれない人と一緒にいようという決意を心配して、彼のことは忘れて別の道を見つけてもいいのではないかと言った。わたしにとってはマーヴを忘れなければならないことのほうが辛いのに。彼女なりの思いやりが伝わるだけに余計誰も解ってはくれないと孤独になった。
フジコ・ヘミングは「人の言ってることなんかわかったものじゃない。自分の肉眼でちゃんとみなきゃ。」と言ってくれた。彼女は苦難を乗り越えたからこそ人の痛みが解るんだ、きっと。自分の感情の置き所に迷ったときはそっと彼女の本を開いてもう一度確認する。