シーナ先生 April,10 2045 16:30 ファンデンブルグ研究室 ブラッド 第37戦 東3局 西家 33,000点 トップ目 『リーチ』 8順目にブラッドの対面の親からリーチがかかった。 「う〜ん、困った。現物が無いや・・・4ピンの雀頭落しかな〜」 「あ〜、その4ピンは当るわよ、マンズのペンチャン面子を落とせばいいわ」 「はい」 『ロン・・・5,800点』 上家の切った1ピンがロン牌として表示された。 「え? ピンズは通りそうだったのに・・・」 「中盤以降の切り出しは、牌をまたいでいることがあるから覚えておいてね、今のはこんな形からね・・・」 「はい」 「逆に、面子選択の時のカンチャン外しや、トイツ落としを狙い打ちすることもできるからね」 「・・・難しいですね・・・」 「うん、でもそのうち感覚で分かるようになるわ」 「はい」 第37戦 東4局 南家 33,000点 トップ目(2位との差2,200点) 『リーチ』 9順目にブラッドの下家の西家からリーチ宣言。 「げ、ラスの奴からリーチだ。2位と2,000点ちょっと差だから、振り込みたくないな〜」 「そうね、ツモって貰ってもいいわ」 「4ソウ切りのリーチで筋の7ソウを打ちたいけど、ドラが8ソウだから嫌な予感がする」 「あら、ブラッド君、いい読みね。多分、 からの4ソウ切りだとアタシも思うわ」 『ロン・・・5,200点』 暫定2位の対面が筋で切った7ソウが、予想通りロン牌として表示される。 「2〜3順前に切り出された筋牌は注意が必要ね。ドラが絡む場合は特にね・・・」 「はい」 WINNER Brad 33,000・・・2位 ・・・25,600・・・ ブラッドの勝利を告げるテキストがフォログラムの中でスクロールしている。 「これで、7連勝・・・なんだか、信じられないな」 「そうでもないわよ、ブラッド君はとてもセンスがいいと思うわ」 「本当ですか? 昨日まで振り込みまくりだったんだけど・・・」 「守りについては、少しずつ覚えていけば格段にレベルが上がるわ、攻撃の方はいい感性をしているから・・・」 「はい、ありがとうございます。シーナ先生」 「どういたしまして」 「よっしゃ〜」 ブラッドは、右横で腕組みをして立っている女性にお礼を告げ、両腕を天井に伸ばし歓喜の声をあげた。 ジパングから客人として来たシーナと呼ばれた女性は、微笑みながらコーヒーカップを口に運んだ。 「ボス・・・アタシは、店の準備があるので先に出ます」 「わかったわ、トッティ」 「後で、迎えの車を回しますので・・・」 「お店は遠いの?」 「・・・歩いて5分くらいですけど・・・」 「あはは、それなら歩いていくわ」 「恐れ入ります・・・」 ブラッドの後方で、トッティとシーナ先生との会話が聴こえ、ブラッドは左腕の時計を見た。 (もう、こんな時間か・・・朝、昼食べていないことを忘れるくらい集中していたんだ・・・) 38回戦に入った時にヴァレンが、部屋に入ってきた。 ヴァレンはトッティと会話をしている円香に会釈をしてから、ブラッドに尋ねた。 「どう、ブラッド調子は」 「なんだか、凄いんですよ・・・」 「へ〜」 「シーナ先生の読みが恐ろしいくらいにぴたりと嵌って」 「それは頼もしいわ、ブラッド」 「えへへ」 トッティを見送った円香が2人の後ろに近づいてくると、ヴァレンが椅子を引いた。 「ジパングからの長旅の後、すぐにご指導頂いて恐縮です」 「いいのよ、ファンデングルグさん。アタシも麻雀は大好きだから」 「そういって頂けると・・・ありがとうございます」 配牌を取り出したブラッドの横で、円香とヴァレンとの会話が聴こえる。 『チー』 (なんだ? 1順目からチーかよ、下家・・・) 「あら、貴女、プラチナブルーのピアスをしているのね。ひょっとしてトッティの彼女?」 「いいえ、彼とは孤児院時代からの15年来の付き合いで・・・兄妹みたいな関係なんです・・・」 「そう、綺麗な白銀の髪に良く似合っているわ」 「ありがとうございます。シーナ先生」 「あはは、シーナ先生だなんて、柄じゃないわ、マドカって呼んでね」 「はい、では、アタシのことはヴァレンとお呼び下さい」 「OK.ヴァレン・・・フレンドリーにいきましょう」 「ええ」 『ポン』 「あ〜、また鳴くのかよ、下家め〜」 「シーナ先生、親の時に、右の奴に染められている時は、絞った方がいいんですか?」 ブラッドが、頭をかきながら円香に質問をした。 円香は、ブラッドの手牌と場の状況を見て答えた。 「その手なら、好きなだけ鳴かせればいいわ、どうせ4回しか鳴けないんだから」 「あはは、了解です・・・おっと、カンチャンずっぽしのツモだ」 『リーチ』 38回戦 東1局 東家 25,000点持ち 6順目 「あらあら、2ピンを一発でツモって8,000オールになるわ・・・」 円香はそう告げると、化粧室を借りたいとヴァレンに申し出、ヴァレンが円香を自分の部屋に案内する為に席を立った。 「じゃあ、ブラッド、勝負がついたら支度をして、声を掛けてね」 「はい」 ヴァレンと円香がガラスの扉を開け、廊下に出ると、 「おっしゃ〜8,000オール」 と、ブラッドの大きな声が響いた。 ヴァレンと円香は顔を見合わせて笑いあった。 |