K馬日記
サリュウラヴケーマ号とバリトンサックスの『ウエエ、ウエエ』なわだち
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朝、私はあまりの暑さに目が覚めた。 外に広がる青々しい新緑に私は奇妙な感覚を覚えた。 朝からこの暑さは、夏日の不快感に似ていた。 それにしても、こんなに快晴の日は珍しい。 久しぶりに森にでもでかけてみようか。 毎日の生活ですり減らされた心を森林浴で癒す。 天気がいい日はこれが一番良い。 周囲はこんなアナログを軽視してモダンな娯楽に耽っているようだが。 私には私の楽しみ方がある。 ・・・ 森の中で寝転がってみると。 やはり、蒼い空気が深く胸に入ってくる。 森林の湿潤で新鮮な空気が心を癒す。 遠くでは活気のある商店街のにぎわいが、快く響いている。 森がうごめいているのもわかる。 そう、森は生物なのだ。 生命の共同体が大きな生命の外郭を担い、内部で新たな流れを持つ生き物が成立する。 あまりの穏やかさに、知らぬうちに私は寝てしまった「らしい」。 ・・・ 「おい。」 背後から何者かの声がした。 振り返ると、奇妙な生物が遠くから近づいてきていた。 どうやら概形は虎のようだ。 しかし、顔にあるのは大きな目が3つ。 瞼はなく、まるで大きな水晶球のようだ。 それは近未来的なフォルムとも見て取れたが、悪魔のそれのようでもあった。 虎は数メートル手前で立ち止まると、流暢に人語を話し始めた。 「お前は一体ここで『何を』している?」 「私は森林浴にきたのです。」 「満足だったか?」 「はい。森林の空気に癒されました。」 「では帰りなさい。」 「いえ、もう少し居させて頂けませんか?」 「ダメだ。」 「何故です?」 「お前はこの生態系に歓迎されていない。わからないか?森に煙たがられているぞ。」 「あなたは一体なんなんですか?神ですか?悪魔ですか?」 「神だとしたら何だ?」 「民の自由を保障する義務がある。」 「神が悪事を行なわないなどというのは、単なる教条主義だ。私は平気でお前を殺せる。」 「じゃあ、どうすれば良いのです?私はまだここにいたい。」 「では好きにしろ。私は命令に来たのではない。忠告に来たのだ。いずれ自分から帰りたくなるだろう。」 「そりゃあ、時間が経てば帰りますよ。」 神は消えた。 ・・・ 気付くと、商店の喧騒は消え去り、森のうごめきも消えていた。 更に悪い事に、暗雲がたちこめてきたでは無いか。 さきほどの快晴は見る影も無く雲に遮られた。 ふと、朝の「奇妙な感覚」が何であるのか。 突然わかり始めた。 確か、昨日は雪が降っていたはずではなかったか? 暦の上でも今日は依然として冬のはずだ。 小春日和にしては早すぎる。 そもそも、たとえ仮に小春日和であったとしてもだ。 あまりにも暑すぎはしないか? 私は半袖で家を出てきたのだ。 と、腕を見ると、私は長袖を着ていた。 どうやら、勘違いをしていたようだ。 確か半袖の上に、長袖を着てきたんだっけか。 あれ? 何故私はマフラーをしているんだ? どうしてブーツを? 傘など持って家を出ただろうか? ちょっと待て。 そもそもこの森はなんだ? なんでこんなところに居る? 私はどうやって来たのだ? わからない。 帰れない。 森はもはや私を消化してるかのように思えた。 ここは生命の胃袋ではないか? さっきまで新鮮だった空気がまるで胃酸のように痛いものとなっていく気がした。 いや、実際は「空気」ではなかった。 もう液体ではないか? 息が出来ない。 ・・・ だんだんと固体化しているのを感じながら。 私は絶命した「らしい」。 私は外側から自分の固まった死体を見ていた。 どうしてだ? 霊体離脱ではあるまい。 私は小川に自分の姿を映し、そこに3つ目の虎を認めた。 だから私の言う事に従えば良かったのだ。 自分しか信じるべきではなかったのだ。
多田K馬
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