誰にもいわない秘密
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2007年09月18日(火) 始めない。


「この人を失いたくない」と思ってしまうかもしれないという予感があるから うかつに寝ることは出来ない。

今日は「この先も笑って会えるように、一度この前の気持ちをリセットしたいから会って」とお願いして、2時間弱ほど一緒に飲んだ。
Gさんを待ちながら自分の体が変に汗ばんでくるのが分かる。
どんどん指先が冷たくなっていく。

ちょっと遊ぼうと思った女が以外にシリアスで関わりたくないって思ってるんじゃないかな とか
私なにやってんだろ わざわざこんなとこまできて とか
自分の中でぐるぐる気持ちが渦巻いて 頭もボーっとしていた

電話が鳴る
ついたんだ

並んで歩きながらドキドキが止まらない

嫌われても好かれても関係ない と思っている人にはテンションあげて接することができるが、嫌われたくないが勝ってしまうとダメだ。
10代の小娘のようになってしまう。

「時間作ってもらってありがとう。予定があったのにごめんね?」
「大丈夫だよ なんか早く会ったほうがよさそうだったから。」

向かい合って座る。
Gさんの香水のにおいがふわっとする。

「香水つけてるよね」
「わかる?そんなたくさんはつけてないけど。」
オスっぽいにおい。
Gさんに似合ってると思う。
そのにおいにまたくらっとする。

夫を含めて今まで付き合ってきた男はほとんど皆なにもつけないか、つけても軽いものばかり。
私が好きなのはこういう男っぽいにおい。
正直にいうと向かい合って話しているだけで、濡れてた。

寝ることができない上に、なぜわざわざ今日こうやってリセットするために会う必要があるのかを話していたら

「真面目なんだね」
と。

「真面目なんじゃなくってビビリなの。嘘をつくのも苦手だし。」
「そう?この間はなしたときは嘘もつけるって言ってたじゃん。」
「そういう風にいう事は出来るってだけで。嘘をつくのって大変だから・・・。」

私が嘘をついて時間を捻出するに値すると思える人だったら どんな嘘もつく。
というのは黙っておいた。

「ずるい言い方だからさ、俺は独身で今彼女もいないわけで。だったらいいなと思う人にはいくよ。それだけのことなんだよ。」

そうだよね あなたにとってはね。
だってあなたは誰にも嘘をついたりしないでもいい状況なわけでしょ?
でも私は違う。

というか、どうして私は今まで簡単に寝ることが出来たんだろう。
好きでもなんでもない、ただ誘われていやじゃなかったというだけで。
夫と穏やかな生活をすごしているのに夫を愛しているのに失いたくないのに、簡単にベッドにいった。

たぶん、続ける気がまったくなくて、一晩だけのことだと割り切れていたからだ。

私はGさんと寝た後のことが容易に想像がつく。

寝てしまったら きっと私の中の女はGさんにすがる。
彼とのセックスを独占したくて、どうしようもなくなる。
けれどGさんは普通に恋人も欲しいし結婚もしたいタイプのようだから、そういう私がだんだん疎ましくなる。
いつしか会うのを避けていくようになる。
高い確率でそうなる。

そのときの私はきっと無様だ。

店を出て階段を下りるとき、少し足元がおぼつかなかったので手すりを掴んでいたら空いているほうの手をGさんがしたから掬い上げるように支えてくれる。

「だから、そんなふう(女の子扱い)しないでったら。」
「だって危ないじゃん」

ありがと、と言いながら手を離したところでGさんの側の電車が来た。
乗り込む前に「リセットできた?」とにっこり笑うGさん。

「うん ありがと」と答えながら心の中で「うん やっぱり寝ちゃいけないってよく分かった。私のために。」とつぶやいた。

「少し惜しいことしたかなあと これで良かったんだというのが同じくらいになりました。」とメールして、私は頭を冷やすために久しぶりに一人でバーに行く。

2杯グラスを重ねたところで席を立つ。
電車に乗ってすぐGさんから「ものすごく惜しいことしたのかもよ なんてね」と返事が来る。

さーっと頬が高潮するのが分かる。

あなたとしてみたい。

その言葉を現実に口にする時きっと私は「一度だけ、あなたとどうしてもしたい。でもしたら、もう二度と会わない。」と言うだろう。

寝たら始まる、と好きな小説家が書いた短編にあった。
よみながら「寝ないとわかんないじゃん」なんて思っていたけど 今はこんなに分かる。

終わりに向かっていくセックスというのは つらいものだ。


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