妄想暴走オタク日記 web拍手


2008年04月17日(木) シンクロ


 「お、亮。久し振りやなぁ」

 読んでいた雑誌から目を離してこちらを振り返った村上は、言って笑い顔を寄越した。
 「久し振り…かなぁ?」
 「そうちゃう?ちょい痩せたなー思うくらいには」
 村上の言葉に「痩せました?」と自らの体を見回した錦戸は、心外だと言うように小首を傾げる。本人的には太りたいと思って、筋トレもするし食事だってきちんと摂っているのに、一向に太らない体質が恨めしい。
 「納得いかん、いう顔してるで」
 そんな錦戸の内心の動きを読んだらしい、村上が人の悪い笑みを浮かべる。まぁ今に始まった事やないやん、と錦戸の傷心を吹き飛ばし、ソファの座り位置を僅かにずらして、錦戸に勧めた。
 「で、ドラマはどうなん?順調に進んどる?」
 「ぼちぼちかな」
 村上が何冊か持ち込んだらしい、テーブルに置かれた雑誌の一つを手にとって、錦戸は答える。ぼんやりと目を通しながら、そういえばこの人は見てくれているんだろうな、と根拠もなくそう思った。
 「回を追うごとに俺、ファン減らしそうですよ」
 苦笑い気味に言った言葉には、村上もつられたような苦笑いを浮かべる。けれどすぐに笑い直して、それこそがお前の思うツボやろ、と言った。
 「”かっこいい亮ちゃん”だけに興味があるような子には用はないんやろ?私も殴られてみたい、くらいのファンの方が好きそうやもん、お前は」
 「それじゃ俺自身が変態みたいやん」
 「あれ、違った?」
 言いながらそれでも、実際の錦戸はむしろ真面目なのだろうと村上はまた、笑い飛ばした。様々言い募ってみてもいとも簡単に笑い飛ばす、その軽さが心地いいと錦戸は思う。

 ドラマを録っていて、ふとデジャブを感じる事がある。

 演じる自身の気が重くなるような、ろくでもない役だけれど、ただ一つ感情移入出来るとしたら、自らが歪むほどに他人を想い募る、その愛情だったに違いない。
 雑誌を捲る振りをして、錦戸は、隣の村上の横顔を盗み見る。
 DV男を演じながら今、改めて思った事がある。その昔、焦がれるほどに村上を想っていた頃、何を犠牲にしても手に入れたいと思っていた。けれどあの頃、手に入らなくてよかったのかも知れない。
 だってこの手に入れていたら、自分は今演じる「彼」のように、村上に何をしていたか分からない。
 当時の村上に、そこまでが予想出来ていたかどうかは分からないけれど。
 何を押しても引いても頑なに錦戸に靡かなかった村上は、ある意味天才的な嗅覚で、絶妙な駆け引きで、錦戸との距離を測っていたのかも知れない。自らを「何の取り柄もない」と言ってはばからないけれど、それは彼の天賦の才能なのだろうと、錦戸は確信する。そしてそれこそが、錦戸が好きで堪らない彼の一面なのだった。
 「何、考えとるん?」
 だって、ほら。
 今だって錦戸の目線ひとつで村上はまた、そうやって何かに気付く。
 「別に、何も」
 だから錦戸も、ただ笑みひとつ浮かべる事で、その場をやり過ごす。いちいち言葉にしなくとも、村上には伝わる筈だった。
 「そう?ならええけど」
 言いながらもう雑誌に目を落とす、村上の事を改めて、錦戸は、好きなのだと、こんなにも愛しいのだと思った。



▼23:38


立て続けに亮雛ですけども、私自身は今、定期的に襲われる倉雛ブームで、す(笑)!

今、秦基博にハマってるんですけども(今頃)「鱗」を聞くたびにあぁ倉雛書きてぇーとか思いながら電車に揺られています(要は通勤途中のiPodヘビロテ)。あー倉雛語りたい。

そんな訳で、書きたい事は多々あるんですが、どうにも日記の書き方を忘れつつあある感…。



とりあえずそのうち大智ドラマを見たら、また感想を書きに来ます。(たぶん)


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