妄想暴走オタク日記 web拍手


2007年10月30日(火) 柔らかい殻


 その人はらしくなく、苦笑じみた笑みを浮かべた。

 「おまえが俺に憧れてくれてるいうんは何度も聞いたけどな。実際、そう思ってくれるんは嬉しいし。ありがたいなぁ思とるんやけど」
 けどなぁ、とまた笑う。どこか奥歯を噛むような、酸っぱい顔になる。
 「けど、あれはあんまり似すぎてて気持ち悪かってん」
 初めにそう言ったのは横山だったのだと、村上は言った。番組中に挟まるジュニアのコーナーのVTRを見ていた横山は、たまたま隣にいた村上に辛うじて聞こえたくらいのごくごく小さな、短い呻き声を上げたらしい。
 「何?」
 それこそ苦虫を噛み締めるような渋い表情を浮かべた横山に、何気なく村上が聞けば、今度は聞き咎められた事に横山は、また苦笑いを浮かべた。
 「何や、おまえを見とるみたいや思て」
 画面の中には”達人”と称する一般人とやり取りをする後輩達の姿。最近では随分テレビに慣れてきたものの、自分達からすればまだまだ初々しい彼らの姿を、逆に新鮮に思えたりもする。前へ前へと頑張る姿は数年前の自分達ともダブって、だからこそ、今見ている映像に軽いデジャブを感じたのだと思った。
 「中田、おまえに憧れとるだけあるわ」
 そう思わんかった?と問われた村上は、そんな横山の顔と、まだ続いている画面の中田を交互に見直す。その仕草すら横山にしてみれば随分と芝居じみていて、それを声に出して笑おうとしたけれど、横山の意思とは逆に、唇だけが笑みをかたどった。

 「似ているのは悪い事ですか?」
 思い出し話をする村上に、中田はストレートにそう、聞いてみる。駆け引きもまるで何もない、考えなしなそんなやり方だって昔の自分に似ている、と村上はまた笑いたくなる。そんな村上の胸中は中田には知れなかったし、目の前の村上は、別に怒っている訳でも、責めようとしている様にも見えなかった。
 「悪くはないで」
 ただな、ヨコがそう言うたから、と村上はただ笑う。それは見方を変えればちょっとしたのろけのようにも見えた。横山と村上の関係性なんて中田が邪推するまでもなく、いわば周知の事実のようなもので。だから今更、割って入ろうだなんて思ってはいない。けれど、それとは別のところで憧れは確かにある。そういう想いだって構わないと言ったのは、他ならぬ村上なのに。
 「確かに言うたよ。けど、上手く言われへんねんけどなぁ」
 おまえかって、分かっとるんやろ?と村上は言う。自らを手に入らないと分かっているのだろう、と問うてくる村上は随分と傲慢にも見えたけれど。そんなのも好きなところだって思う。
 「何やろ、はっきり言うて下さいよ」
 はっきり振って下さい、とは言わない。村上がそうしないだろう事は予想がついたし、それ以前にもう、目の前の村上の態度にもう何度目か、振られているようなものだった。
 村上が横山の話をする時、それはどこかふわりと柔らかな。差し出される横山像ははっきりしているのに、それを手にする村上は随分と浮ついている気がする。だからそれが、要するに。
 横山を語る村上の、穏やかな顔。内側から滲み出るあたたかな笑みや、テンションの上がらない、素の声色でさえ。
 ここにはいない横山に、よほど村上が愛されているのだろうと知れる。それこそ上手く表現が出来ないのだけれど。いつでも村上の周りには横山がいるような気がする。そういう存在感で、いつだって目の前の村上が、およそ中田の手には入らないのだと思い知るのだ。
 だから、村上が横山の話をする時。それはひどく残酷な幸福感を伴って、意地悪く中田を試すのかも知れない。
 今、中田に笑いかける村上の口は、また柔らかに中田をからかってみせる。
 「そろそろな、おまえも。ほんまに大事なもん確認せなアカンで」

 村上が指差した先には、横山に似た穏やかな笑い顔が、心配そうな気配を浮かべてこちらを伺っていた。



▼23:39



甘受12月松竹おめでとうございますー。という訳で。
なかったらどうしようと待っていたので、よかったー!やっぱり夏冬一度は松竹に参りたいのです(笑)。何だろうなーあの空間が、やっぱり好きなんですよね。

まぁそれとは直接関係はないんですが、先週じゅに勉を見て、濱ちゃんにダメ出しをする大智があんまり雛ちゃんナイズされていたのに震えて、書こう書こうと思っていた大智と雛のお話を思い出したように書いてみました。横に愛されている雛が書けたらいいなと思ったんですけど、そういうのが伝われば嬉しいかなと。第三者的に見るそういう空気はよほど幸せで、中てられるんじゃないかなと思うんですけど(笑)

でも、愛されるのは幸せだと思うんですけど、それに胡坐をかいてはいけないんだと思います。
愛されている自分が嬉しいのは分かるけど。自惚れてはいけないと思う。
誠意とか、思いやりとか。そういうの、忘れちゃダメでしょう。


いつもは割と暇なのに、予定が入る時って何でいつもバタバタと増えるもんなんだろう。
また久し振りに元同僚から遊びのお誘いも来て、映画に駅プラン…楽しみが増えて嬉しい♪
東は結局、今週末もう来ないんだよね?







それにしても今日のニュースはショックでした…。
リアルに青春だったので。こんな形で近況を知りたくなかった。これで大体の年代が分かると思うんだけど(笑)わたし達世代には本当に、懐かしくも大事な青春だったんですよ。そういうものが汚された気さえしてしまう。好きだった人をそういう風に言うこと自体が悲しいけど、夢を売る商売で、こういう形で裏切るのは絶対によくないと思うなあ。今更リーダーのコメントとかも聞きたくない。


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