朝起きたら、となりで目覚まし時計が死んでいた。 2時27分を指したまま、ピクリとも秒針は動かない。
裏を見ると乾電池が微妙にずれていて 乾電池を差し込んであげると、またチクタク動き出した。 やっぱり、ただの接触不良だけだったようだ。
そして、テレビをつけてから知った。 今日、午前5時ごろ東京で震度4の地震があったこと。 僕は、すぐさま時計を見た。
お前まさか・・・。
ショートショートで有名な星真一氏の作品の一つに 「愛用の時計」 という話がある。 この話は、5年前から肌身離さず、寝る時も外さないほど ずっと大切にしていた腕時計。 定期検査もかかさず、愛用していた腕時計がある日、壊れてしまう。 そのある日が、旅行に行く日であった。 時計が壊れてしまったせいで、バスに乗り遅れてしまった。 今まで大切に扱ってきたのに、時計に裏切られたような気分にされ 修理のために、時計店に行くと 「おかしいですね、どこも故障していないようですが」 と言われ。 そんなはずはない、確かに壊れていたんだ。
その後、自分が乗るはずだったバスが転落事故を起こしていたことを知る。 時計が壊れていたため乗り遅れ、結果的に転落事故に巻き込まれなかったわけだ。
物を大切に扱っていると、いつか物から感謝されるという話だったはず ちょっと内容は違っているかもしれないけど。
そう、つまりこれは、虫の知らせ、いや時計の知らせ。 僕の愛してやまない目覚まし時計 お前には何度も何度も裏切られてきたが 結果的に、なんらかの事件に巻き込まれなかったのかもしれない。 影ながらいつも、助けてくれていたのかもしれない。 お前ってやつは・・・抱きしめちゃうぞ。
いや待てよ! 今回だけは、まったく関係ないような 時計が止まって、僕が遅刻とかしたら意味はありそうだけど 今日は、普通に目覚めたし、地震が起こった直後は気づかずにぐっすり寝てたし。 こういう場合は地震が起こる5分前に、セットしていないはずの 目覚まし時計が突然鳴った。 それにより、なんらかの危機を回避した。 とかじゃないと効果がないような・・・気もするが・・・。
いや待てよ!! 今まで目覚まし時計を大切に扱ってきたか、思い出しても見ろ。 ずさんに扱ってきたではないか。 「起きなきゃいけないことぐらいわかってんだよ」 時計を床に投げつける。 「ジンジン、ジンジン、うるせーな」 時計を拳で叩く。 「たく、使えない時計だな」 時計を蹴り飛ばす。
そう考えると、目覚まし時計を大切に扱ってきたとは言い難い。 むしろ、今までわざと鳴らなかったり動かなかったりしていて さりげなく時計の反逆を受けていたのではないか、とさえ思えてくる。
物に心が宿るならば、目覚まし時計は大切に扱わなければならない。
そう思った。
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