友達の家で今夜に開かれる江戸川花火大会について4人で盛り上がっていた。 その場には5人いたが、残り1人は盛り上がれずにいた。
2人は結婚していて、もう2人はカップル。 残った僕は、4人の「愛」「恋」「のろけ話」「結婚話」に口を挟まず聞くだけに徹していた。 熱い、熱すぎる、僕の目前には炎の壁がそびえ建ち行く手を阻んでいる。 目には見えないが 「触るとヤケドします」 と書かれた紙が壁に貼られていた。 会話の輪の中に入るには、お酒を飲みまくればいい。 お酒を飲みまくれば、確かにその壁を乗り越えられる。 だが、乗り越えたところで、飛んで火に入る夏の虫みたいに 自ら身を滅ぼすような結果に陥るのが目に見えている。 そう感じ取った僕は、ただただ炎の壁の外側でなりゆきを見守っていた。
次第に熱々会話にも飽きたのか、標的を僕にかえ一斉攻撃を仕掛けてきた。 「そろそろ、彼女作らないの」 「ドラクエでアイテムを探すより、先に彼女探さないと」 「理想が高すぎるんじゃない」 「四年もいないなんてありえないわ」 悪意のカタマリのような4人から繰り出される波状攻撃の嵐。 僕の過去を知っている分、余計にタチが悪く的確に的を射ている。
話の渦中にいた僕は気づかなかった いつの間にか炎の壁に囲まれ退路を失っていたことに。
次から次へと飛んで来る言葉のナイフ 逃れようのない攻撃に突き刺さる僕の心。
しばらくして、花火が打ちあがる時間になり家から出た5人。 ドーン! という音とともに歓声を上げる通行人 花火よりも通行人のカップルばかりがやたら目につく僕。 前にいる四人の後ろから、そっと歩いていた僕。 空を見上げると大輪の華。
あぁ〜〜〜っ。 あの花火は僕の引き裂かれた心の傷口から 飛び散った血で出来てるんじゃないかなぁ〜〜〜。
そう思った。
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