俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
トップページのみリンクフリーです。
Mail 



 

目次
 

 

サダキヨの清算(13分) - 2009年09月17日(木)

「20世紀少年 第2章 最後の希望」 2009年1月31日公開映画

最近、新作DVDレンタルとして出ていたのを、やっと借りて観ることができました。
現在公開中の「最終章 ぼくらの旗」の前におさらいしようとする人が多かったのでしょう。

先日は、日本テレビにて「もうひとつの第2章」が放送されてましたが、
これとこのDVDとを合わせて観なきゃねー、ということだったんですね。
※「もうひとつ」→サダキヨのシーンが全てカットされ。代わりにカジノシーンと、爆弾仕込んだ丸子橋のシーンが入っている。

(以下、サダキヨのシーンに絞って感想。少しネタばれ有り)


どういうわけだか小学生時代を引きずりまくる大人たちが沢山出てくる作品のようだ。
コドモの頃に強く心に刻んでしまったこと(恨みや自己顕示欲や、その妄想)が
その後の人生と周囲の世界に、ずーっと長い支配と影響を及ぼす。オトナのサイズに肥大していくばかり、
「少年の心を忘れない」っていうのはかくも、おっかない事だった。

50歳を過ぎても口調が小学生。「ともだち」も、サダキヨも。
でも、「ともだち」が、
自己顕示の欲望を膨らませながらも自分の正体を巧妙に隠し、他人の記憶まで操作して過去をミスリードし、誰かを身代わりにし、濡れ衣を着せる、
そんなせこい奴なのと比べると。
まだ、サダキヨは、「恩義」に忠実でいたいという指向を感じさせるので、もっと真っ当な人間かと。
ただ、忠誠を捧げる相手を間違えて、恩義と情愛の間で心を引き裂かれてしまってから
間違いに気づいた。

カンナと響子のクラスに来た、
新任教師としてのサダキヨは、
静かに死んだように登場し、死んだように喋る。死んだような目が重たい。
(ユースケ氏の感情表現の窓のひとつである、眉毛、が今回無いことは、効果的)

が、時折、見せる、
サダキヨは、怒っている。
昔から、誰にも理解されたことがなかった。という事に。
自分の趣味も、自分の存在も、誰も理解してくれてなかった。そんな他人と、そんなそんな自分に対し。怒ってる。

やっと自分で決めた正しい道に、もう迷うものかと。
が、その傍からすぐ、迷いが来る。
まるでそれを振り切って逃げ切るため、のように
時折、早口で捲し立てる。

小泉響子に聞かせる身の上、
「ともだち」だけが友達だった、と語った後で
あれ、もう包囲されてしまった、と緊急事態を告げる
その他人事のような口調に、全く変化がない。
彼の中ではどちらも既にもう一大事ではない、並列の事項なのだろう。

彼が声を荒げるのはもっと別の事項に対してだった。
彼にとって大切なのは、これから選ぼうとしている道が「善い」か「悪い」か。
かつての主人を今は裏切り、カンナにモンちゃんの遺志を託すことが、善いことか?
信じた判断が、もう二度と覆らないうちに
急いで逃げ切ってしまいたい。

虐められっ子だった彼にとって、あのカリスマ「ともだち」は唯一人の友達であり続けていたんだ、
・・・と思い込もうと、これまでサダキヨは努力してきたが
やはりそれは無理だと気づいた、その時には
事態は取り返しがつかなかった。
(いや、もっと物事をポジティブに考えられる人間ならば、取り返しがつくのだけれど。サダキヨだから、もう相当ダメ)

「ともだち」と、自分自身の、来し方に対し
「善いモンか?悪モンか?」と何度もジャッジしてみずにはいられない、かなしさ。
善いモンと信じて自分を差し出していた対象が、実は悪モンだったと認めてしまえば、どんどん気づく。
ずっと昔の子どもの頃から裏切られ、捨てられていたことに。

上手に付け込まれ利用されたことに気づくのが、あまりに遅いと
こうなるのよ。では済まされないような、
かなしい顔。と、涙。
それはサダキヨ自身が自分自身を罰して許して癒すほかはない、
閉じこもった自殺の部屋で最後にそれを自分自身にしてあげられたのだろうか。
足元で燃え広がる炎の中で
涙眼は、恨みと後悔と自己憐憫と諦めを、
でも微かにわらった口元は、贖罪と清算を決行できるせめてもの安堵と希望を、
互いに矛盾を相容れながら表現しているように感じた。

彼が生きていたことは決して小さくはなかったんだ、ってことを
登場からわずか13分間のシーンでカンナ(と、私)の中にこんなに遺したなんて。





-







 

 

目次