俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
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「俺は鰯 -IWASHI-」WOWOW ここでも愛と勇気を振り絞っています - 2005年12月08日(木)

「俺は鰯 -IWASHI-」 WOWOW 2003年4月

DVDのパッケージを見るとユースケ氏がいかにも疲れてそうな顔なので、「えーどうしようかな」と観るのをためらう人もいるかと思うけれど、きっと観る価値があります。

鰯。魚偏に弱いと書く。いつも群れていて逃げ回っている、雑魚。
そんなサカナに喩えられる、平凡で意気地なしの男。プライドもなくて、理不尽な仕事のためにあくせくする。
友達を見殺しにしたという、苦い思い出も抱えてる。
そんな高城太郎が、勇気を奮い起こすことができたのは、
慧敏(フイミン)という一人の女のおかげ。
彼女は娼婦という境遇の中でも誇りを忘れない。それは父親の病気を治したい一心だった。
そんな彼女の心に触れて、彼は仕事も捨てて、危険の迫る彼女を追って台湾へ。
そこには親友の五十嵐の友情や、外科医の沙耶の協力もあった。

苦労して父の元に帰った慧敏は、父の死によって、糸が切れたようになってしまった。
でも、わざわざ日本から彼女を探し出してくれた高城に、心を開いて、今一度、前を向いた慧敏。
危険を承知で、父の形見の高価な皿(それは3億円はするだろうという貴重なもの)にまつわる取引に出向く。

彼女が教えてくれた言葉「人生是美好的」(人生は、捨てたもんじゃない)を胸に、生まれて初めて必死になって慧敏を守り抜こうとする高城。
ごく普通の弱々しい男が、暗黒社会を相手に立ち上がる。

ヤクザの右腕となって彼女を追っている王富龍(ワン・フーロン)にも、かつて恋人を自分の手で殺したという、彼なりに忌まわしい過去がある。
彼は凄腕で、冷たい。「人生は、クソみたいに汚い」を身上とする。
しかし、高城と慧敏を追い詰めて銃口を向ける富龍に、何かの変化が起こった。
身を投げ打って彼女を助けようとする高城と、高城のためなら大事な皿さえ要らないという慧敏。
二人の強さの波及効果が、富龍の寒々しい心にも届いたとき、富龍もまた「人生是美好的」の真の意味を悟るのだった。

つまるところ、本当の強さは、誰かを愛するがゆえの人生肯定ってことなんだろう。それこそが、さえない人間に光を与え、奇跡的な火事場の馬鹿力を発揮させてしまうものだ。
(鰯も実は美味しいし、栄養もあったのだ)
彼女と一緒に生きていくことで、高城は「群れない鰯」に生まれ変わった。

こんな高城の役にユースケ氏がぴったりなのは言うまでもないことだ。
いかにもかっこいいアクションはないけれど、かっこ悪さがかっこいい。
弱っちいようでいて、いざとなると、男になる。どこにそんな底力を隠していたのアンタは、と言いたくなる場面の代表として、
私はひとつ選りすぐって、このシーンを挙げたい。
皿を探しに来た富龍が、高城が泊まる部屋に押し入って彼に銃を向けたときに、高城が、慧敏から預かった皿を持った手を窓の外に伸ばして、「これでも、撃つのか?落とすぞ!」
恐怖に耐えながら丸腰のギリギリの状態で富龍に対峙している、その表情と声。良かったです。



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