俳優ユースケ・サンタマリア氏を個人的趣味で鑑賞...いえもと(改名しました)

こちらでは、ユースケ氏の出演作品の中から、後世に残したいとまで気に入った作品&ここまでこのドラマを食い入るように観てるのって私だけだろうと思ったドラマを、筆者が勝手に必要以上に評価させて頂いています。ネタバレ有です。
ドラマのあらすじを知りたくない方にはお勧めできません。
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「ホテルサンライズHND」テレビ東京 ユースケ氏がスッピンになるまでの軌跡  - 2005年10月11日(火)

「ホテルサンライズHND(羽田)最後のステイ」テレビ東京 2005年3月31日放送

すばらしい日の出の見えるソファーが売りの老舗ホテルの「最後の一日」を、堤 幸彦原案で、
4人の監督(堤 幸彦・大根 仁・薗田賢次・二階 健)がショートドラマに仕上げたもの。
ROOM555「LOSTMAN」 ROOM666「TRIPLE SIX」 ROOM777「伝説の男」 ROOM888「妻の本音」
4つの部屋を舞台に、異質のドラマが、同じ一日の中で、繰り広げられる。
どの話もそれぞれに、意外性のあるオチが楽しめて良かった。

ここでは、ユースケ氏の出演した、ROOM777(監督・大根 仁)を取り上げる。
「伝説の男」

20年間ずっとホテルの777号室を借り切って住んでいる、師匠であり「伝説の男」映画監督野口カズヒコ(松尾スズキ)に呼び出された山本ヒロシ(ユースケ氏)。彼はかつて野口を目標に映画の道を歩み、今は売れっ子監督になっている。
部屋に入ってみるとそこはゴミ溜めのような有様で、世間とのつながりを断ち切って愛する妻と二人きりで暮らす野口がいた。
妻は、野口のかつての傑作映画に主演したヒロインの、16歳の少女の時の姿そのままの高宮伸子(蒼井優)だ。
ただひたすら妻と二人で閉じこもり、新しい作品も生み出すことなく、また他の映画を観ることもせず、二人だけの自己満足世界に生きる野口。
そんな野口に期待を裏切られ、驚きあきれ、失望する山本。憧れの存在が、壊れていくやりきれなさ。だが最後はこの哀れな伝説の男の、あんまりな悲劇的決断を見せつけられることになる。
ユースケ氏の持ち味のひとつ・常識人としての巻き込まれスタンスのうまさが、松尾スズキや蒼井優の異常さと対比して相乗効果をなし、印象深いドラマだ。
それも、ユースケ氏の場合、異常なキャラを寄せつけないような単なる常識人ではなくて、異常さへの共感も包容力も漂わせる、ゆらゆらした土台の常識人を思わせる。だからよけいに私も、彼の目を通して観た野口に危なっかしい気分を味わうことになる。

さて、ユースケ氏のファンとしての私が、特に見逃せないコマはどれか。
☆野口の部屋に案内した支配人(大杉蓮)と会話する、いかにも売れている映画監督、な山本。売れてるけれど、それほど巨匠でもないのかな、という、ほどほどな雰囲気を匂わせていて、こんなユースケ氏も貴重だ。
☆部屋に入ったものの、なかなか姿を現さないで声だけで撮影を指示する野口にいらだちながらも、その辺のゴミなどを撮らされる山本。
「被写体とセックスしろ!!」等わけのわからないことを叫ぶ野口の声に対する、困惑した山本の反応が、ファンにはおいしい。
☆20年前に映画のヒロインだった女優・伸子が、当時の姿そのままに目の前に現れたときの、疑惑と混乱と恐怖の山本の表情
まるでお化け屋敷に迷い込んで助けを求める子供のようだ。
☆かつての傑作「豚と太陽」の中の、伸子の映像だけがモニターにエンドレスに流れる寝室で、野口の話を聞いているうちに、すっかり伝説の男のイメージが崩壊して、冷え切った心の山本が、現在の伸子に向かってさびしく、
「今日会ってはっきり分かりましたよ。伝説の男はもう死んでますよ」と言い放つときの表情。こんな人を追ってきた自分までバカみたい、という自虐的気分も読み取れる。
この、内心の虚無的でシニカルな感じを上手に引き出した撮り方もまた良い。特に、目元。特に、下まつげが良い。こういうアングルで、こういう掘り出し物が見せてもらえて、ファンとしてはとても嬉しい。
☆野口が妻とベッドでビデオ撮影したくだらない「最新作映画」に哀しくなる山本。「あなたほんとに野口カズヒコですか。あの、ギラギラしてて、おっかなくて、・・・やさしくて、・・・スケベで、・・・」失ったアイドルへの哀惜の念が切ない。かつての野口への愛がこもっているセリフだ。そしてモニターに蹴りを入れる山本。いったいあの憧れの、伝説の「野口カズヒコ」はどうしちゃったんだ!?という怒りに、情けなさ哀しさが入り混じってて良い。
☆野口が自分なりに本当の意味での「伝説」のラストを作ろうと、物騒な行動に出始めたときの、山本のうろたえ。やや涙声入った「ふざけるなよ?もう!」というセリフ。
これは冗談だと思いたい、お願いだからやめて欲しい、嘘だと言ってくれという思いと、あるいは、ここまで行くしかない伝説の男の結末を、見守るハメになるのかという、嫌な予感が、交錯した感じが、よく現れた口調だった。このあたりから、山本のセリフから皮肉っぽい感じが消えていく。(それどころじゃなくなっていく。)
松尾スズキは、伝説を伝説で通すことにこだわりたい男の弱さ哀しさもにじませつつ、一層アッチの世界に行ってしまったような演技。蒼井優も浮世離れした感じで素敵だ。とんでもないことになるとわかっても止めきれない山本・ユースケ氏の最後の演技にはもう、何のカッコつけもなく、スッピンそのものの悲鳴。
この三人の息詰まるようなラストに、結構、泣かされてしまった。







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