月に舞う桜
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一番付き合いの長い親友二人に、年々、本音を言えなくなっている。会う前は、あれも話そう、これも言ってみようと考えるのに。自分の中ですでに消化できているようなどうでもいい愚痴は話せるし、LINEだとそれなりに突っ込んだ話もできるけれど、面と向かうと、自分にとって一番核となるような真面目な(あるいは深刻な)あれこれが話せなくなる。 やっぱりこれを話すのはやめておこうと、意識的に思いとどまるわけではない。その場に流されて、話したいと思っていた内容が心の底に沈んでしまう。 でも、やはり本当は遠慮しているのだろう。 子育てや親の介護などなどで、彼女たちはそれぞれに大変だし忙しい。私の悩みなんて……と思ってしまうのは事実だ。私の話を聞いて、彼女たちが「そんなこと」と思ったりしないのは分かっている。分かってはいるが、どうしても真面目で深刻な顔になれない。
親友と別れてから、帰り道や家の自室で、あれも話せなかった、これも話せなかった、と悔やんでしまう。 どうしてなんだろう。いつから、こうなってしまったのだろう。 親しいからこそ、話せないこともある。誰かがそう言っていたし、それは真実だと思う。思うけれど……。
書いていて思い出したが、たぶん、「こんな話されても困るだろうな」という懸念が大きいのだろう。 もう人生にうんざりしていて、早く終わりたい。日常生活全般で他人に介助してもらわなければ生きられない人生が、煩わしすぎてうんざりだ。そんな話をされたって、二人とも困るだろう。 私だって、彼女たちに何と言ってほしいのか分からないし、人に話したからって解決できる問題ではないことくらい分かっている。
ただただ、本当は話したいことが話せなかったフラストレーションだけが溜まっていく。 いつから、どうして、こうなってしまったのだろう。
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