月に舞う桜
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私は、独りで外食したり長時間外出できる期間が限られている。 自力で上着の脱ぎ着ができないから、上着が必要は寒い季節は無理だし、傘の着脱ができないから、季節にかかわらず雨の日は無理だ。 それなら夏はどうかと言えば、最近の夏は猛暑日が多く、外出先でこまめな水分補給が必要だ。ペットボトルのお茶を飲むこととマスクを外すことはできるが、はずしたマスクを着けることはできない。お茶を飲むたびに、見知らぬ誰かにマスクを着けることを頼むわけにはいかない。そもそも、夏は暑すぎて外へ出る気にならない。家から駅へ行くだけで、ぐったりしてしまう。
そんなわけで、いまは独りで外食できる貴重な期間だ。 無性に、独りでどこかへ出掛けたくなる。 何時間でも、出歩いていたくなる。 ネットで、行ける場所にある店に美味しそうなメニューを見つけると、どうしても食べに行きたくなる。それが、本来ならどうしても食べたいような好物でなくてもだ。 ほとんど強迫的に、出掛けたくなるし、食べたくなる。 今を逃したら、もう二度と行けないとでもいうように、強迫的に、出掛ける。
それが、幸せなことなのか、それとも不幸なことか、よく分からない。 独りで自由に出掛けられるのは幸せなことだが、そういう日がものすごく少ないから強迫的に出掛けざるを得ない人生は、不幸なことではないだろうか。
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