月に舞う桜

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2019年12月11日(水) 【本】『歴史戦と思想戦』

山崎雅弘『歴史戦と思想戦 ――歴史問題の読み解き方』読了。

戦時中の思想戦を振り返りつつ、現在の歴史改竄者たちが使うトリックを解説し、彼らの言説に騙されないようにするための助けとなる良書。
歴史改竄者たちのトリック(言説のおかしさ)の解説も分かりやすいのだが、フロムの『自由からの逃走』を引用しながら、権威主義に傾倒する心理に触れた箇所が興味深い。
権威者への自己同一化は孤独からの解放であり、権威に服従すると自分で考えて行動選択しなくていいので、ある意味楽である。
この、権威主義に走る心理は、カルトに傾倒してしまう心理と共通している部分が多いのではないかと思う。
(だいたい、現政権および現政権のバックにいる極右政治団体がカルトっぽいしな)

ただ一点、気になった箇所がある。
「日本人はGHQに洗脳されている」という歴史改竄者の言説に対して、「日本人は『七十年以上も洗脳される』ほど知的能力が低い国民なのか」と反論しているが、洗脳されていることと知的能力は関係ない。
(私も「日本人はGHQに洗脳されている」は否定するが)

”歴史問題”とは別の話ではあるが実際にカルトの洗脳やマインドコントロールが問題となっている中、「洗脳される=知的能力が低い」かのように読者に思わせる書き方は、カルト被害者への偏見を助長しかねない。

とは言え、良書であることには変わりない。おすすめ。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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