月に舞う桜
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2015年05月30日(土) |
hide 50th anniversary FILM「JUNK STORY」 |
hideのドキュメンタリー映画を観に行った。 hideのミュージシャン仲間や後輩、親交のあった人たちへのインタビューに加え、生前のライブ映像やhide本人へのインタビューが織り交ぜられている。hideがどんな人だったのか、何を遺したのか、音楽への姿勢、周囲とのかかわり、愛情、才能……そういったものが様々なエピソードを通して語られ、hideをめぐる過去と現在が繋げられていた。
塚本高史のナレーションが、なかなか良かった。抑揚をつけすぎず、いい意味で淡々と落ち着いているのだけれど、端々に温かみが感じられる声だった。
hideのインタビューと、映画制作にあたって新しく撮ったhide以外の人たちのインタビューがうまくごちゃ混ぜになっているので、時間の隔たりをあまり感じなかった。同時期に撮ったと言われても違和感がない。 でも、よく見ると、やはり年の差は隠せない。 インタビュー対象者の多くは、ロックミュージシャンということもあってか年齢のわりに若く見える。それでも、彼らの顔や体型には、生きてきた年月が確実に刻まれている。皆等しく、17年分、老いているのだ。 hideだけが、若い。
ふとした拍子に、その「若さ」と「老い」の差を感じて、少しかなしく、寂しくなる。 けれど、私たちの17年分の老いは、誇るべきことなのだとも思う。
hide、私たちは、ここまで生きてきたよ。それぞれの年齢にふさわしく、体力が衰えたり、皺が増えたりしたよ。 私なんて、hideの年を超えちゃった。 みんな、それなりに年取っちゃったけどさ、それは私たちがちゃんと生きてきた証だよね。
hideのインタビューや、実弟で事務所社長でもある松本裕士さんの話からは、hideの孤独な一面がうかがい知れた。 多くの人に愛されても、仲間に囲まれていても、見た目が派手でも、本当はとても孤独な人だったのだろう。 あれだけ才能豊かで、先見性があれば、孤独も仕方のないことなのかもしれない。 別に、かなしいことでもないか。あれだけ周囲に愛をまき散らし、これだけ周囲に深く愛されているんだもの。
XJAPANからは、YOSHIKIとPATAが出ていた。 Toshlにもオファーがあったかどうかは分からないけれど、観終わったとき、出てなくてよかったなと思った。遠い昔の思い出を話すだけならいいけれど、解散時のこととか、hideが亡くなった時のこととか、今はまだ、聞かないであげてほしい。また自分を責めてしまう気がするから。
インタビューの軸となっているのは、盟友I.N.A.と、実弟の裕士さんだった。 裕士さんは、hideが亡くなった日のことを、いまでも後悔しているようだった。家まで車で送ったのに、なぜ部屋まで行って様子を見なかったのか、と。 後悔する気持ちは分かるんだ。本人にしてみれば、当然だろう。 でも、もう自分を責めないでほしい。 hideが死んだのは、hideがバカだったからだ。ただ、それだけだ。誰のせいでもない。
私、怒鳴りつけてやりたいもの。「酔っぱらって事故って死ぬとか、あんた、どんだけバカなんだよ!」って、ほっぺた張り倒してやりたい。
だから、誰も、自分を責めないで。
裕士さんは、本当にhideに尽くしてきたんだろうなと思う。 hideに乞われてマネージャーになって、そのときから、「hideさん」と呼ばなければならなくなった。ある意味、兄弟ではなくなったのだろう。 あれだけ偉大な兄を持つと、捻じ曲がった思いを抱いたり、兄とは関係なく自分の道で生きたいと思ったりしてもおかしくないのに、ずっと一番近くにいてhideを支え続けた。もはや兄ではなくなった「hideさん」から、ときには怒られたり、ときには車の後部座席から蹴られたりしながら。
私は、hideに対しても「悔やまないで」と言いたい。 XJAPANが解散したとき、「ファンを裏切ってしまったから、合せる顔がない」と言って、詰めかけたファンに姿を見せないよう、車の中で体を低くしていたそうだ。 当時、裏切られた、と思った人はいただろう。中には、いまでもそう思っている人もいるかもしれない。 けれども、少なくとも私は「裏切られた」なんて思っていない。あのときは確かにかなしかったけれど、すべては、仕方のないことだ。 そして、一番大事なのは、いま、XJAPANが進行形であるということ。
hideは、偉大だ。それは間違いない。 でも、生きている人間の方が、もっともっと偉大だと思うの。 だって、hideの音楽や言葉や想いが受け継がれていくのは、生きている人間がいればこそなんだから。
特に、I.N.A.ちゃん。 私は、実は彼のことをそれほど詳しく知らないのだけど、このドキュメンタリー映画を観ると、彼は本当に偉大だ。心から尊敬する。 hideに「才能のすべてを俺のために使ってくれ」とまで言われ、その通りにした人。盟友。片腕。同志。 hideが亡くなってわずか半年後、hide with Spread Beaverのツアーをやり遂げた。I.N.A.ちゃん自身が言っていたけど、その頃、バンドメンバーの精神状態はギリギリだったらしい。そりゃあ、そうだろう。それでも、hideのために、ファンのために、ツアーを回った(自分たちのため、という意味もあったと思うが)。 そして、現在。I.N.A.ちゃんの尽力により、世に出ることが叶った新曲「子ギャル」。hideの歌声をかき集めて、歌詞に合わせて1音1音繋ぎ、足りない部分はボーカロイド技術で補完したそうだ。なんと気の遠くなるような作業だろうか。亡くなった人の歌声と長い時間ひとりで向き合い続けることは、精神を激しく消耗するに違いない。 すごいな、I.N.A.ちゃん。たぶん、彼にしかできなかったことだ。 ありがとう。
やっぱりかなしいし、寂しくもなるんだけど、この映画を観終わったとき、不思議と元気が出た。 ライブ映像もあったし、hideのエネルギーややさしさや、強い思いや、ハチャメチャっぷりや、周りの人たちの大きな愛情をたくさん感じられたからかな。 hide自身はいなくても、私たちが生きている限り、hideもまだまだ続いていくんだって思えたからかな。 だから、元気が湧いてきたのかな。
頑張って前へ前へ生きていくぞ。
ありがとう。
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