月に舞う桜

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2015年05月28日(木) Mr.Children TOUR 2015 REFLECTION

仕事のあと、横浜アリーナで行われたMr.Childrenのライブに行った。
ミスチルの横浜アリーナのチケットが取れただけでも奇跡なのに、実は9月の日産スタジアムも取れてしまった私。もう、今年の運をすべて使い果たしてしまったんじゃないだろうか、と、ちょっと怖いくらい。
かなり暑くて、仕事中ちょっとしんどくて調子が悪くなりそうだったけれど、結局ライブの最後まで体力が持ったし、翌日も体調を崩すことなく仕事できたので良かった。

去年の秋に横浜アリーナであったXJAPANのライブのときは、ステージから遠いスタンド席に車椅子スペースが設けられていたのでステージが小さくしか見えなかった。
今回のミスチルのライブは、アリーナ席の脇に車椅子席があり、Xのときよりはステージが近かった。ただ、高い位置ではないので、客席が皆立ち上がると、ステージが見づらくなる。
結局、どこの席でも良い面と悪い面があるものだ。それは、車椅子席に限ったことじゃなく、他の一般の人たちだって同じこと。

≪セットリスト≫
fantasy
ロックンロールは生きている
旅人
fanfare
Melody
FIGHT CLUB
斜陽
I Can Make It
口笛
HANABI
口がすべって
蜘蛛の糸
REM
WALTZ
放たれる
進化論
足音 〜Be Strong
幻聴
===アンコール===
Everything(It's you)
エソラ
Marshmallow day
未完


ミスチルのライブは、本当に純粋に、楽しい。悲しいこととか苦しかったこととか、余計なことを考えなくていい。エネルギーが過剰すぎるわけでもない。
ただただ、無邪気に「楽しい!」って浸っていればいいから、楽だ。

最初の方のMCで、「ミスチルは東京でのライブが実はそれほど多くなくて、横浜でやることの方が多い。だから、横浜は僕たちのホームタウンだ」と言ってくれて、嬉しかった。親近感湧くわぁ。
あとは、「今日は五感をフルに使って、目で見て、耳で聴いて、ときにはにおいも……ミスチルの男臭さ、じゃなくて、人間臭さを感じてください」とも言っていた。

ステージセットやスクリーンの映像や構成が作り込まれていて、プロのステージだなあと思う。桜井さんが「メンバーで何度もミーティングを重ねてきた」って言うだけのことはある。私たちを楽しませたい、いいものを届けたいっていう想いが伝わってくる。

セットリストの半分は、6/4に発売される新しいアルバムの曲だった。
アルバム発売前に収録曲をガンガンやるって、すごいなあ。それだけ、新しいアルバムに自信を持っているってことかもしれない。
今回やった新アルバムの曲は、去年秋に行われたファンクラブ限定ライブで披露されていて、そのライブは、2月に映画化された。私はそのライブフィルムを観に行っていたから、「タイトルが思い出せなくても、なんか聴いたことあるな、これ」って曲が結構あって、今回のライブは楽しめた。

私、「ロックンロールは生きている」とか「fanfare」とか「REM」とか「エソラ」とか、速い曲だと自然に縦ノリしちゃうんだよね。
でも、周りを見ると、あんまりそういう人はいなくて、もちろん皆ノってはいるんだけど、全体的にXよりはおとなしい。まあ、Xよりおとなしいのは当たり前か。
で、そういう雰囲気…平均的なノリ方を見て「あ、そうだった。ミスチルって、こういう感じなんだった」と思い出す。

「I Can Make It」のあと、ステージから少し客席側にせり出た場所に簡易ステージを作って(ドラムセットを組んだりとか)、「口笛」からしばらくはそこで演奏してくれた。

「口笛」の前の3曲は新しいアルバムの曲だったから、そんなにコアなファンじゃない人たちを桜井さんが気遣っていた。

桜井さん「ミスチルが大好きで、いつもライブに行っているような友達がたまたま具合悪くなっちゃって、チケットくれたから来ました…っていうような人とか、最近付き合い始めた彼が車の中でいつもミスチル聴いてて、カラオケでもミスチルばかりで、正直もううんざりしてるんだけど、一緒にライブ行こうよって言うからついて来ました…っていう人とかも、いると思うんです。次は、そういう人もたぶん知っている曲です」

で、「口笛」。これは、1番を客席が歌って、2番は桜井さんと一緒に歌った。
うん、これはいい曲だよね。やさしい気持ちになれる曲だ。

「口笛」のあと、なぜか金魚の話。
桜井さんは、家でたくさん動物を飼っているらしい。犬、ハムスター、カメ、金魚……他にも言ってた気がする。
で、水の循環が悪くて、金魚を死なせてしまったそうな。ペットショップの店員さんに聞いたら、「水も、死んじゃうんですよ」と教えてもらい、それがすごく印象に残った。そこから、「HANABI」という曲は生まれた、と。

いや、ね。客席、苦笑いですよ。
「HANABI」って、めっちゃ心に沁みる名曲なんですよ。私、今回のセットリストの中では、一番好きなくらい。
その名曲が、もはや「金魚を死なせちゃった話」の曲になっちゃったからね、私たちの中では。

いや、でも、いざ聴いたら相も変わらず、ぐっと来る切実な歌でした。良かった良かった。

そのあと、またMC。
今日のお客さんの割合が7対3くらいで女性が多いから、反感買うかもしれないけど…と前置きして、桜井さん、ガールズトークの番組は絶対見ないと言っていた。
なぜかと言うと、テレビ番組はスポンサーが出す広告費で成り立っていて、スポンサーが広告費を出せるのはその企業が儲かっているからで、企業が儲かっているのは、皆が汗水流して働いたお金でスポンサー企業の商品を買っているから。で、皆が一生懸命働いたお金がガールズトークの番組なんかになってるのかと思うと、なんか嫌なんだそうな。

まあ、私は、ガールズトークよりも他にもっと下らない番組はいくらでもあるでしょ、と思うけどね。
そもそも、一生懸命働いて疲れて帰ってきて、ガールズトーク観て「そうだよねー、分かる分かる!」ってテレビの前で頷くのって、悪くないし。ま、私、女だからさ。

でも、桜井さんは男なのだ。
ミスチルの曲でも、たまに、男女の決定的な違いとかどうにも埋められない溝みたいなものを感じるときが、ある。
だけどそれは、決して嫌な感じでは、ない。
むしろ、女には不可解な男の本音を曲の中に込めたりするのを、結構好ましく、何だか愛おしく思えたりする。
「ああ、男と女って、やっぱり相容れないものなんだなあ。だからこそ、お互いが理解しようと努力しなくちゃいけないんだな」って痛感するし、理解しようと努力する姿勢が曲から感じられることも多い。

で、理解しようとする努力が感じられるのが、次の曲「口がすべって」なわけで。
桜井さんは、「戦後70年という節目に、どうやったら平和でいられるかを考えている」と言って、この曲に入った。
結局、世界全体の平和も、国家間や民族間の平和も、一対一の「理解しようとする努力」の先にあるものなんだろう。

「放たれる」は、生で聴くと、テレビで聴くよりもさらに強くて温かい曲だった。
「進化論」の前のMCでは、キリンの首はなぜ長くなったのかについて、三つの説を教えてくれた。
一つ目、ラマルクの説。経験や努力で親キリンの首が長くなり、それが子へと受け継がれていった。
二つ目、ダーウィンの説。突然変異で首の長いキリンが現れ、首の短いキリンは淘汰された。
そして、三つ目、最近提唱されている新たな説。親の世代では努力や叶わなかった願いが、子のDNAに書き込まれて受け継がれ、長い年月をかけて子孫の代で叶えられる。

三つ目は、ダーウィンよりもラマルクの説に近いものだろう。努力や願い、なんて、ずいぶんと情緒的だ。あんまり科学的じゃない気がする。
でも、この三つ目の説を取り上げたのは、何とも桜井さんらしいなと思った。社会を構成し、社会の中で生き、次世代へと何かを残すには、そういう情緒的な感覚も大事だ。科学の中にも……科学の中にこそ、温かさとか祈りとか愛とか願いとか、そういうものが絶対に必要なわけだから。

うーん、でも、ちょっと違うかな。私が考えていたのは、そんなに難しいことじゃない。正しい進化論がどれなのかなんて、私にはどうでもいいと思った。
いつかいつか、願いが叶うといい。ただ、それだけだ。今すぐには無理でも、ささやかな願いが集まって、いつか大きな実を結びますように。あの高い木のてっぺんにある葉っぱも食べられる日が来るように、信じて、いまは首を伸ばすことしかできないけれど。


アンコールは新旧織り交ぜた4曲。
「未完」でライブを締めたところが、ミスチルは今後もどんどんパワーアップしてくれるんじゃないかと期待を高めてくれた。
「未完」なんて、ずっと第一線を走っている立場だからこそ、堂々と言えることかもしれないな。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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© 2005 Sakurai Yuzuki