月に舞う桜
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変わりたいと思った。関係を変えたいと思った。けれど、それは叶わなかった。 だから今度は、変わらずにいられることを願った。 でも、この心地よかった関係は、少しずつ変化していかざるを得ないのかもしれない。
些細な言葉を聞いて、見捨てられるような気がした。 見捨てるとか見捨てないとか、そんな類の話じゃないのに。 君はそんな意味で言ったんじゃない。私が、勝手に傷ついた。 それは、3月のこと。
そして、4月。 「しょうがない」って許せていたことも、本気で心の底から嫌になって、腹立たしくて仕方がなくなった。 だって、社会人として、あるいは一定の立場として、自覚が足りないんだもの。 何だかんだ言ってもうまくやっていけると思っていたのに、恋愛感情が冷めたら、こんなものなのか。女ってドライだな。
そんなふうに感じていた頃、思いがけず、またあの「瞬間」がやって来た。 笑って、毒を吐いて、でも心の中では許していて、君は苦笑いしながら言い訳しつつもケロッとしていて、皆に突っ込まれて、また笑って。 愛しい、と思う。君のことを、ではない。こんな気持ちでいられる、この瞬間、空気、そういうものをとても愛しく思う。
こんな瞬間をくれるのは、君しかいない、と勘違いしそうになる。
そんなの、今だけよ。 きっとそのうち他の誰かが現れて、もっと飛び切りの「こんな瞬間」をくれるんだ。そうに決まっている。
本気で嫌気がさすのも本当。愛しいと思うのも本当。 行きつ戻りつしながら、進むんだろう。 変えられない。でも、もしかしたら変わって行かなきゃいけないのかもしれないし、変わらないかもしれない。いまは、分からない。
周囲が「いいコンビだ」と言う。 それは、オフィシャルな関係のこと。分かっている。かつて私が望んだような意味での「いいコンビ」ってことじゃない。 「いいコンビ」と言われるのは喜ぶべきことなのか、それとも少し悲しくなってもいいことなのか、それは私の気持ち次第。
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