月に舞う桜
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2010年11月02日(火) |
Coccoエメラルドツアー |
Zepp Tokyoで行われたCoccoのライブに行った。 XJAPAN以外のライブに行くのは久しぶりだ。一度はこの体で直に体験したいと思っていた、念願のCoccoのライブ。
セットリスト↓
ニライカナイ 首。 強く儚い者たち Light up 十三夜 カウントダウン 4x4 クロッカス のばら カラハーイ あたらしいうた 焼け野が原 樹海の糸 三村エレジー Spring around Stardust 眠れる森の王子様 蝶の舞う 絹ずれ 玻璃の花
ライブは60分の予定だったけれど、大幅に伸びて90分以上……2時間近くあったかな。MCは最小限で、ほとんどずっと歌いっぱなしだった。 ちょっとXのライブのあり方を考えてしまったなあ。 ライブ時間はXのほうが長いのに、曲数は断然Coccoのほうが多いんだもの。しかも、Coccoは曲と曲の間の待ち時間がなくて、最初から最後まで全力疾走なのだ。 Coccoと同じようにやれとは言わないけど、Xのメンバーにも少しは見習ってほしいものだよ。
ライブは想像以上に凄まじかった。CDも迫力があるけれど、生のCoccoはそんなもんじゃなかった。 あの細い体のどこにあんなエネルギーがあるのか不思議で仕方ないくらい、それはもう体中から気迫がほとばしっているのだ。
1曲目の「ニライカナイ」の出だしでCoccoが「イーヤ、ハーイーヤー、スイ、スイサーサー」と掛け声を発した瞬間、体も心も完璧にCoccoワールドに持って行かれた。 溢れ出る情熱、狂気と呼んでもいいほどの感情に感化されて、泣いてしまった。
喉やお腹じゃなくて、魂で歌う人だ。 マイクを持っていないほうの手を肩から胸の高さに上げて、時おり体を大きく前後に揺らして歌う姿は、大袈裟じゃなく神がかって見える。 最近のCoccoの歌には、よく琉球言葉が使われる。私は、その言葉を理解できない。理解できない言葉を投げかけられるから、余計に神がかって見えるのかもしれない。
人は様々な感情を抱えながら、それを自分で抱えることができなければ捨てて忘れ去ってしまう。Coccoは、人が捨ててきたそういう大切な感情を一人ですべて受け止めて、私たちに伝え返す。そうして、私たちに思い出させる。 彼女の歌う姿を観ながら、そんな印象を持った。
今回のライブはツアータイトルから考えるに、新アルバム「エメラルド」の曲ばかりやるのかと思っていた。 でも、昔の曲も結構歌ってくれて、私にとっては嬉しい誤算だった。
特に素晴らしかったのは「カウントダウン」だ。 あの狂気の世界にぞくぞくした。 曲の最後、 「3つ数えるまでに天使に会える さあ 目を閉じて 撃ち殺してあげる 3.2.1」 のところでステージの照明が消え、ピンスポに照らされたCoccoを観たときは、体中に鳥肌が立った。「撃ち殺されたいっ!」と思ってしまうくらい、虜になった。 なんて光の似合う人なんだろう。いや、正確に言えば、Coccoは「光が作り出す影」がとても似合う人だ。
それから、ずっと生で聴いてみたいと思っていた、「焼け野が原」。 念願がかなって感動した。 歌い始めたとき、私はあまりの嬉しさに「あっ」とか「ひゃぁっ」とか、何か叫んでいたと思う。
細い体は、いまにも倒れそうで痛々しいほどなのに、それでもどこか美しく感じた。 Coccoはライブ中盤で、両手を広げてくるくる回ってみせた。その姿を見て、バレエをやっていたから体に芯が通っていて、きれいに見えるのかもしれないと思った。 もちろん、彼女が美しい理由はそれだけではないだろうけれど。
「のばら」のとき、トライアングルを一度だけ「チン」と鳴らす仕草がかわいらしかった。 「首。」や「カウントダウン」を歌ったときとはずいぶん印象が違う。 愛も狂気もかわいらしさも、すべてCoccoの見せる表情。
「眠れる森の王子様」では、スタッフが何かミスしたらしく、歌い始めて2小節くらいでCoccoが曲に乗って「もういっかーい!」と叫んだ。 ライブは、こういうアクシデントも面白い。
MCでは、街を歩いてるときに「Coccoさんですよね?」と声を掛けられたけれど、ツアーのリハのことを考えて頭がいっぱいだったので、否定も肯定もせずに無視してしまった……というエピソードを話し、「ごめんやー」と謝っていた。 あまりサービスできないから、せめてちゃんと歌います、というようなことも言っていた。
「玻璃の花」を歌ってすべてを終えたとき、Coccoはステージ上で崩れ落ち、うわーっと声をあげて泣いた。 抱えてきたもの、走り切ったこと、いろんな想いが込み上げて溢れたんだろう。 泣き崩れるのも納得できる、濃密なライブだった。 Coccoは、メンバーに支えられるようにして、ステージを去って行った。
こんなライブをまた観たい、とは気軽には言えない。 でも、またあの空間に行きたい。
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