月に舞う桜

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2010年02月28日(日) ToshI LAST CONCERT<5>

ToshI LAST CONCERT【武士JAPAN】Produced by YOSHIKI
の最後。


YOSHIKI「このメンバーが揃ってるとさ、ついついXJAPANと勘違いしちゃって、あれ? 今日は薔薇がないの? って」
ToshI「『薔薇がないよ、用意して!』『YOSHIKIさんのコンサートじゃないです』 ってね」

それから、ToshIがまた客席に向かって水を撒いた。
客席で振られているhideちゃん人形に、YOSHIKIが気づいて、

YOSHIKI「あ、hideも来てるんだね」

って言った。私も、腕に抱いていたhideを高く持ち上げた。

YOSHIKI「ToshI、もう1曲行くの?」
ToshI「いいですよ」
客席「暴れてー!」
YOSHIKI「だから、暴れるコンサートじゃないって。暴れられる体でもないし。さっき言ったじゃん、徐々にって。ロスかなんかでウォームアップコンサートでもやろうかな」
ToshI「言っちゃっていいの?」
YOSHIKI「言ったって、どうせ信じないから」
ToshI「ロスでやるより、日本でやれって言われちゃうよ。お前らがロスに来いよ、オイ!」

そ、そんな、脅すように低い声で言われても、私はロスへは行きませんよ? い、行かないもんねーだ。

YOSHIKI「元々みんなロスに住んでたんだよね。気づいたら俺だけになっちゃったんだよ。そう言えば、SUGIZOもよくロスに行くよね。ま、大人の事情があるんだけど」

会話が途切れ、じっと顔を見合わせるToshIとYOSHIKI。

ToshI「煮詰まったね」
YOSHIKI「全然煮詰まってないよ」
ToshI「煮詰まってないか」
YOSHIKI「じゃあ、ToshIから最後に一言」
ToshI「はい。今日は本当にみんな集まってくれて、どうもありがとう。僕は本当に、最高の友たちに囲まれて、幸せだなと思います。ありがとう。世界一のと言うんでしょうか、ここまで本当に熱く熱く、深く深く応援してくれるみんなに感謝します。本当にありがとう。自分としてはここで区切りをつけて、新たなスタートを切れたこと、本当に嬉しく、心強く思います。これから、残された人生……」

ここで、客席からいっせいに「えーー!!」という声が上がった。
「残された人生」なんてこと、そんな静かな口調で言わないでよ、ToshIくん。

ToshI「まあ、まだまだ、あと50年という人生……」

50年! すごいね、あと50年も生きたら94歳だね。私、それまで生きてないかも……。
でも、ToshIくんは、ずっとずっと歌っていて。

ToshI「じじいになっても、歌っていくぜー!! ちょっとハイトーンは無理だぜ。……Standing Sexも無理だぜ」

だんだん声が小さくなるToshIくん。
Standing Sexは無理なのかあ。じゃ、今のうちに歌っておいてもらわないと!
ステージ後方へ歩きかけたToshIは、ふと振り返って付け足した。

ToshI「変な意味じゃなくてだぜ?」

これには客席もYOSHIKIも大ウケ。
分かってます。変な意味じゃないのは重々承知でございます。

ToshI「ということで、最後は、運命共同体のお前たちとー! 有終の美を飾るぜーー!! 行くぜーー!!」

そして、YOSHIKIのピアノによるENDLESS RAINの前奏が始まった。
いつものように、みんなで大合唱。
曲の後半、節約のために今回は却下されたのだと思っていたミラーボールが、ステージの天井から下りてきた。それは、赤坂BLITZという会場で使うにしては大きなミラーボールで、とても美しく輝いていた。まるで、ToshIやXのほかのメンバーや私たちを照らす太陽みたいだった。

ToshIもYOSHIKIも、みんなが嬉しそうだった。
サビのリピートはいつもより短めだったけれど、心はとても幸福に満たされて、温かくなっていた。

ToshI「また会おうぜーーーっ!!!」

ToshIが叫んで、5人がステージの前方に並び、万歳。
私は、万歳の代わりに膝の上のhideを高い高いした。
ToshIがメンバーひとりひとりと抱き合い、4人はステージを去った。
ステージにひとり残ったToshIは、私たちに向かって深くお辞儀した。とても長い長いお辞儀だった。それから、名残惜しそうに何度も手を振ってくれた。

ToshIがステージから姿を消しても、「本日のコンサートはこれにて終了です」というアナウンスが流れても、私たちはその場を動くことができずにいた。
ToshIがステージの奥に消えた方を見つめながら、SEで流れているSay Anythingをみんなで歌った。私は、溢れる涙が流れ落ちてhideの髪を濡らさないようにと、大きな声で歌った。

ドラムがなくて、アコースティックなライブ。ドームでやるような派手さはない。
だけど、今まで観たどんなライブよりも温かくて、メンバーの愛情溢れるライブだった。みんな本当にToshIを愛していて、いざとなったらいつだって駆け付けてくれるんだ。固い絆、なんて心強いことだろうか。
こんなに素晴らしく素敵な時間を共有できたこと、この場所にいられたことを、心から感謝している。ToshIに、YOSHIKIに、PATAに、HEATHに、SUGIZOに、hideに、そして何より、チケットを譲って下さった方に。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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