月に舞う桜

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2009年05月04日(月) TOSHIインストアイベント in ららぽーと横浜

東京ドーム2daysが終わっても、まだまだゴールデンウイークは終わらない!
というわけで、怒涛の2日間の翌日は、TOSHIの発売されたばかりの新曲「大切なもの」のインストアイベントを見に、ららぽーとへ行ってきた。TOSHIのインストアイベントに行くのは初めてだ。
イベントは15時と17時の2回行われたけど、私は17時の回へ。さすがに疲れが出たから、昼過ぎまでぐだぐだしていたかったのだ。

イベント会場のセントラルガーデンに着くと、1回目終了後のサイン&握手会が行われていた。運良く、TOSHIを見やすい位置を確保。
仮設ステージの真ん中で、TOSHIが物販購入者と握手し、買ったグッズにサインしている。その様子をじっと見守る多くのギャラリー。
昨日はあんなに遠くにいて、肉眼では豆粒ほどにしか見えなかった人が、いまはすぐ近くにいて、こんなにはっきり見ることができる。それが不思議だった。昨日と同じTOSHIだよなぁ……なんて、おかしなことを考えてみたり。
TOSHIはサイン&握手会を終えて、いったん引き揚げた。
会場は屋外だった。次の回が始まるのを待つ間、hideちゃんも来てるかなと思いながら、何となく空を見上げた。

17時10分、イベントの2回目が始まった。
再びステージに出てきて「そろそろ始めるか……」と言ったTOSHIの声はかすれていて、ドームの疲れを思わせる。
準備していると、小さな子供が「としー」と呼びかけた。それに対し、「なあに?」とやさしく応じるTOSHI。
また「としー」と、子供。「なあに?」と、TOSHI。
この「なあに?」って声がね、めっちゃやさしいんですよ。誰の声? って思っちゃうくらい、猫なで声なんですよ。昨日まで「お前ら、やるときゃやれよ!!」って叫んでた人がね、一体どこからそんな声が出るんだ? って思うような、聞いたことのないやさしい声で、子供に応えてるわけですよ。
TOSHIくんはやさしいけど、慣れてるファンにはわざと冷たい言い方をするときがある。それが嬉しかったりもするんだけどね。
でも、いいないいなー。私もあんな声で話し掛けられてみたいいよ。やっぱ、子供は最強だよね。

準備が整って、明らかにやる気なさげに話し始めるTOSHIくん。
「昨日までドームでコンサートやってたんで、疲れちゃって……声出すのも面倒くさいんだよね。PATAと同じくらい、やる気がない……」
拍手と笑いが起こる。
「あのー、漫才見に来てるんじゃないんだから、笑いながら手を叩くのはやめてもらえますか? 僕、一応ロックミュージシャンなんで」
苦笑するTOSHIに、さらに拍手と笑いが。
私たちだって、漫才を見に来たつもりはないのよ。でも、昨日のドームでのMCを踏まえてくれてるから、拍手したくなるじゃない? で、「PATAと同じくらい」なんて言うから、笑いたくなるじゃない?
「今日は2曲歌います。ね、ちょっとやる気あるでしょ?」
PATAとは違うところをアピールしてみる(?)TOSHIくん。
まずは「ありがとうのうた」を披露。
すごい! 話してるときはかすれ声なのに、歌はちゃんと声が出ている。どうやったら、あんな切り替えができるんだろうか。

そのあと、12,3年前に奥方とインドへ行った時のことを話していた。
学校がないところなのに、学校があってちゃんと教育が行われているように見せかけていたと。悪い村長がいて、利権絡みだか何だかのために子供たちに演技させていたと。子供たちの様子がおかしいからあとで訊いてみたら、学校なんて普段はやっていなくて、全部嘘だったと。でも、歌を聴いているときの子供たちの目は、キラキラしていたと。
そんな感じの話だった。

そして、質問コーナー。聞きたいことは山ほどあるものの、手を挙げる勇気はなく……。
最初に当てられたのは、右側の前のほうにいた人だった。
質問者「2日、3日とアリーナから参戦しました。昨日はライブのあと、メンバーと打ち上げに行きましたか?」
TOSHI「世界中からメディアが来てくれて、プレスパーティーがあったので、それには2,30分だけ顔を出しました。そのあとの打ち上げには僕は行ってません。今日これ(イベント)があるからね」
仕事優先で偉いでしょ? みたいな顔をするTOSHIくん。
TOSHI「他のメンバーは……全員は出てないんじゃないかなあ。YOSHIKIは、もしかするとまだ飲んでるかも。PATAは確実にいまも飲んでますね」
TOSHIくん、どうやらPATAネタが好きなようです。

2人目は、左のほうにいた男の子。私のところからは姿が見えなかったからはっきり分からないけれど、声の感じからすると小学校高学年か中学生くらいかな。
質問者「歌手になったきっかけは何ですか?」
TOSHI「歌手になったきっかけ……歌手になったきっかけ? えーと、歌手になったきっかけ?」
この質問によほど困ったらしく、「子供の質問は怖いなあ」とか「僕って歌手ですか?」とか言いながら、このあと「歌手になったきっかけ?」を10回以上は繰り返していた。
その様子がおかしくて、客席からまた拍手と笑いが。するとTOSHIくんは「歌手になったきっかけ?」の間に「だから、笑いながら手を叩くのはやめろって」を挟んでいた。
この質問に対する答えがとっても楽しい話だったので、できる限り思い出して再現してみたいと思います。

「僕は別に歌手になろうとしていたわけじゃないんだけど……プロになったきっかけってことで、いい?
僕は小さい頃から歌うのが好きで、でも当時はいまみたいにカラオケというものがなかったんですね。おじさんの時代って古いから。カラオケがないから、伴奏してくれるものがないと歌えない。それで小学校3年か4年のときに、ピアノとギターを弾き始めました。僕はクラシックとかは弾けないけど、歌の伴奏くらいなら弾けたんです。それで、自分で弾いて、一人で歌ってた。
小学校5年のときに、近くに住んでたYOSHIKIがドラムとエレキギターを買ったんです。両方いっぺんに買ったの。呉服屋のぼんぼんだから。僕はクラシックギターしか持っていなかったから、エレキをどうしても弾いてみたかった。それで、嫌だったけど、仕方なくYOSHIKIの家に行ったんです。エレキを弾かせてもらいに」
嫌だったけど仕方なく、ね。こういうふうにTOSHIがYOSHIKIのことを“悪く“言うと、なぜかとても安心する。私も、仲のいい友達に対しては遠慮ないこと言うから。

「YOSHIKIがドラム叩いて、僕がギター弾いて。当時はまだめちゃくちゃなドラムを叩いてました。ドンドコドンドコって。だから、RIKUくん(TOSHIと新しくバンドを組むことになった12歳の男の子)なんて、あの年でちゃんと叩けるんだから、ほんとすごいと思うよ」
まあ、YOSHIKIのドラムはいまでもある意味「めちゃくちゃ」ですが。
それにしてもマセてたのねぇ、出山少年と林少年は。

「それでバンドを組んで……中学2年のときに3年生を送る会で舞台に立ったりして。僕、最初はボーカルじゃなくてギターやってたんですよ。ボーカルは別にいたんだけど、こいつが歌が下手でね。下手だなあと思いながら一緒にやってて。そいつがアンプを持ってたんですね。歌が下手だけど、メンバーに入れておかないとアンプが借りられないから」
でもさ、そんなに下手なボーカルで、YOSHIKIがよく我慢したもんだ。
その人は、いまはどこでどうしているんだろう。普通のお父さんやってるのかしら。テレビなんかでXのYOSHIKIとTOSHIを見て、「あいつら、でかくなったなあ」なんて思ってるのかしら。

「僕たちが通ってた中学はマンモス校だったんですね。すごく大きかったから、3年のときに別の学校ができて。運良く、僕とYOSHIKIだけが新設校に移ることになって、その歌の下手なやつはそのまま残ったの。
それでボーカルがいなくなって、どうしよう……って。YOSHIKI、歌う?って訊いたんだけど、YOSHIKIは歌えないんですよ。それで僕が歌うことになって。YOSHIKIが歌えてたら、僕はこんなに苦しい思いをしなくてもよかったんだけど」

でもね、私は、YOSHIKIが歌えないことに感謝しているよ。
YOSHIKIが歌えていたら、いまのXはなかっただろうし、私はTOSHIと出会えなかったかもしれないもの。
人生って、不思議だ。人生って、たぶん、何かがほんの少し違っただけで、まったく別のものになっていたのだろうと思う。ちょっとタイミングがずれていたら、いまの友人とも職場ともXとも出会えなかったし、比較的自由に一人で外出できたり、簡単にライブに行けたりする環境も得られなかった。
いま私を取り巻く環境すべてが、奇跡的な出会いの結果なんだなあ。
YOSHIKIも、「僕とTOSHIが近くに住んでいたことが、まず奇跡だと思う」って言っていたし。

「高校になってもバンドを続けていて……僕たちは結構人気があったので、そのうちいろんなレコード会社から誘いが来ました。でも、それを全部断りました。もっと自分たちの価値を高めようとしたんですね。そうしたら、ソニーから声がかかって、ソニーならやってやってもいいかって……あ! ここにソニーの人、いないですよね!?
それでデビューしました。その頃、僕たちは髪の毛をこんな逆立てていて、当時は放送禁止じゃないかっていうくらいだったけど、それでもデビューしまして。それがまあ、きっかけと言えばきっかけです。
こういう難しい質問は、やめてね」

以上、「TOSHIくん、デビューまでの道のり」でした。

最後の質問者は、最前列の真ん中にいた女性。この女性は、TOSHIよりはるかに声が枯れていた。
TOSHI「どうしたの。声、枯れてるじゃん」
質問者「昨日、叫びすぎました」
TOSHI「アホか!」
TOSHIに突っ込まれた。う、羨ましい……。
質問者「去年復活したとき、YOSHIKIとは10年間まったく連絡を取っていなかって聞いて、正直ショックやったんですね。でも、去年こうして復活してくれて、ライブでもYOSHIKIとすごく仲良さそうで、それがめっちゃ嬉しくて……」
ここで、女性は感極まって涙声になった。その想いが伝わってきたのと、私もおんなじ気持だよぉって、これまでのいろんな想いが込み上げてきたのとで、私までうるうる来てしまった。
TOSHI「あの、泣かないで下さい」
質問者「すみません……。私はメンバーと仲良いのが嬉しいんですけど、メンバーとは、よくご飯食べに行ったりしますか?」
TOSHI「プライベートで会うっていうのは、あんまりないですね。みんなあまり会えないので、会える時間があるんだったら、ご飯食べに行くより練習した方がいいかなと思うし。HEATHとはたまに会うかな。YOSHIKIは普段はロスにいるし、僕もずっと仕事があるし。PATAには、付き合いきれません」
やっぱり話の落としどころはPATAなのね。
TOSHI「でも、10年経っても20年経っても、そんなに変わらないと思いますよ。もう付き合い長いしね。大人になったし。できるだけ、いろんなところでコンサートはやっていきたいと思います。そんなに長くはできないと思うから」
うん、そうだよね。そのうち、みんな40代後半になる。YOSHIKIだって他のメンバーだって、体力は落ちていく。いつまでも、いまみたいな激しいライブができるわけじゃない。
「そんなに長くはできない」という言葉をとても寂しくは思うけれど、それは事実なんだろうし、私はそれをきちんと受け止めて、Xがどんな形になっても最後まで見届けるよ。

質問コーナーは終了。
最後に、「大切なもの」を歌ってイベントが終わった。「大切なもの」も、2日間のライブで声が枯れているとは思えないくらい、のびやかで気持ちのこもった歌声だった。
ちょっと迷ったけど、今回はグッズを買わず、サインと握手は諦めた。すぐ近くでTOSHIくんを見ることができて、楽しい話と歌を聴くことができただけで、十分満足だ。
近くにいられたことで、ドームで共に過ごした夢のような2日間までもが、現実味を帯びたよ。
3日間、本当にありがとう。


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