月に舞う桜
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心が、折れた。
大きなクレームを受けたあとなら、へこんだり嫌になったりするのは当たり前だ。 でも、最近はそういうのじゃなくて、ごく些細な行き違いやよくある意見(もっともだとは思うが現状のシステムではどうにもならないもの)にも、うまく対応できなくなっていた。 とにかく、ちょっとのことでイライラして、応対をこじらせてしまったりもした。 それで今日は、お客さんに対しては自分の感情を出してはいけないと必死に言い聞かせて、うまくかわして頑張っているつもりだった。
が、必死に頑張っていたぶん、限界が来てぷつんと糸は切れ、涙が止まらなくなってしまった。 大きなクレームでもないのにこうなってしまったら、すぐには持ち直せない。クレームというはっきりした原因があっての動揺なら、立ち直りも早いけれど、自分の精神状態に問題がある場合は厄介だ。
とても電話には出られないと判断し、半休をもらって帰った。 みんなが心配してくれた、けれど……。
「いつも元気な弓月ちゃんが、どうしたの」 いつも元気なわけじゃないよ。そんな人、いるわけないじゃない。 笑ってれば心が元気なんて、そんな簡単なものじゃない。
「何かあったの?」 何かあったのなら、よかったのに。何もなく、ただじわじわと押しつぶされて行ってこうなってしまうことが、一番恐ろしいことなんだから。
こういうときはXのDVDを観るべきだ。そう分かってはいたけれど、ぼうっとしてしまって、DVDを取りに動くこともできずにいた。 それで、Silent Jealousyを口ずさんでみた。
「どこに行けば 苦しみを愛せる?」 ――XJAPAN『Silent Jealousy』より。
生きる理由を探した。 生きる……ただ息をするのじゃなく、きちんと生きる理由を。 週末は予定があるし、来週末も予定がある。それに、5月までは生きなくちゃいけないんだった。
やっと再び涙が溢れた。 その勢いでDVDをセットしようと決め、「青い夜」にするか「白い夜」にするか……としばし迷った末、思い直した。 いま必要なのは、「過去」じゃない。いまの私にエネルギーをくれるのは、「現在進行形」だ。 それで、「破壊の夜」を手に取った。それならSilent Jealousyも入っていることだし。
同じライブでも、観るたびに新しい発見がある。あ、こんなところでスタッフがこんなサポートしてたんだ! とか。そんな楽しさもあるのが、DVDの良いところだ。 改めて観てみると、正直、やっぱりあのライブは演奏や作りが若干劣っていると思う。10年ぶりだから無理もないけれど、何となくばらばらな感じ。 TOSHIの声はちょいちょいひっくり返るし、紅でYOSHIKIはドラムを叩き切れていないし、ギターの変な音が入ってるし、I.V.のサビを繰り返させるところは探り探りでノリ切れていないし。ピアノからドラムに移って、照明も含めて曲調が変化するときの間が悪いし(HIDEの音と映像待ち? と思わなくもない)。 そんなところに気づいて苦笑しつつ、でも得るエネルギーの方が圧倒的に大きいわけで。
観終わったときは、だいぶ気分が落ち着いていた。 XのライブDVDは大きなスクリーンで観るべき! 誰か、近くにホームシアターやってる人いないかなあ、なんてのんきに考えていたくらい。
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