月に舞う桜

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2009年02月01日(日) 夜に想う

夫婦でも寝室を別にしているという話をときどき聞くけれど、私は基本的には同室にしたいなあと思っている。

でも、同室就寝には一つだけネックがある。
結婚して毎晩同じ部屋で眠るというのは、一人で泣ける場所を失うことだ。それは、困る。
涙は排泄物だ。何日もかけて少しずつ溜まっていき、飽和状態になれば外へ流さずにはいられない。そしてその排泄欲求は、たいてい夜にやって来る。
かなしいことや悔しいことなど理由があって泣きたいときは、相手が受け止めてくれるのであれば、旦那に話してその腕の中で泣くのもありだと思う。
けれども、わけもなく泣きたい夜は、どうすればよいのだろう。そういう夜は、ひとり夜気と毛布に包まれて、孤独でいたいものだ。おそらく、どんなに愛していても、旦那が邪魔な夜。

この間、そんな夜があって、私は夜に一人で泣ける部屋があることに安堵した。
結婚とはたぶんいろいろな自由を手放すこと(その代わり、それまで持っていなかった何か大きなものを得ること)だろうと想像するけれど、泣ける自由を失うことが、一番怖い。

だけど、もしかすると、涙が定期的な排泄物でなくなるような年齢や暮らしもあるのかもしれない、とも思う。

それに、結婚したいと思えるような人には、やっぱり隣で眠っていてほしい。体がこわばるくらいの怖い夢に起こされた夜は、特に。
この間、そんな夜もあって、目が覚めても夢の世界を鮮明に覚えていた私は怖くてたまらず、なかなか再び目を閉じることができなかった。こんなとき、隣に男の人がいてくれたらどんなに安心だろうかと思った。たとえ相手が私の恐怖に気付かず、背を向けて寝入ったままだとしても、その存在を確認するだけで、体の奥にまで入り込んだ恐怖がやわらぐような気がする。

そもそも、結婚の予定なんて全くないのだから、どうしてこんなことを考えているのか自分でも不思議なんだけど。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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