月に舞う桜

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2008年05月10日(土) hide memorial summit(2)XJAPAN編―1

5月4日に開催されたhide memorial summitのレポートの続きです。
出発〜LUNA SEA編

LUNA SEAが退場してXを待つ間、会場スタッフが「撮影、録音、ジャンプ禁止」と書かれたプラカードを掲げて歩いていた。それまでそんなプラカードは一度も出てこなかったのに、さすがXの出番前、警戒が強化されたようだ。
撮影と録音が禁止なのは当たり前だけど、ジャンプ禁止って言われてもねぇ。それは無理でしょ。

そして待ちに待った午後6時40分頃、大型スクリーンにXのロゴが現れた。

XJAPANのセットリスト↓
・Amethyst(SE)
・PROLOGUE〜World Anthem(SE)
・Rusty Nail
・SCARS
・Silent Jealousy
・hideの映像集
・YOSHIKI piano solo
・Without You
・紅
・ENDLESS RAIN
・I.V.(guitar:SUGIZO)
・ピンクスパイダー(guitar:YOSHIKI、drums:真矢)
・BELIEVE(XJAPAN&LUNA SEA)
・X(無敵バンド)

地響きのような歓声の中、Amethystが流れる。
女性の声による、お馴染みのメンバー紹介。TOSHI、HEATH、PATA、HIDE、YOSHIKI。1人コールされるたび、みんなでその名前を叫ぶ。そして、これまたお馴染みの「エックス、ジャパン、ジャパン、ジャパン、ジャパン……」というJAPANをリピートするかたちでのバンド名コール。
この始まり方、まるで単独ライヴだわ!
すぐ1曲目が始まるのかと思いきや、メインステージの幕が開くと同時にWorld Anthemが流れた。走るYOSHIKIを先頭に、4人が登場。
ステージの端から端まで走って、あるいは歩いて回る4人。両手を上げて歓声に答えるPATA。HEATHは白い衣装で、左腕に真っ赤な腕章のようなものをつけていた。なんか昔、これとよく似た恰好の人をどこかで見たことがあるなぁ。どこの誰だっけ?
YOSIKIが、スタンドマイクにかぶりつくようにして「気合入れろ、こらーーーーっ!!」と叫んだ。
続いてTOSHIが「てめぇら気合入れていけ、こらーーーーっ!!」。それでも足りずに、「てめぇら、思い切りいけーーっ! 思い切りいけーーっ! 今日は暴れん坊将軍でいけよ、こらーーーーっ!!!」と、多少声が裏返りながらも叫び続けるTOSHI。
「暴れん坊将軍」の登場が早い!
そして、男性の声で二度目のメンバー紹介。初っ端からAmethystとWorld Anthemの両バージョンのメンバー紹介なんて、これはもう単独ライヴ以上じゃないの!

YOSHIKIが頭上でドラムスティックを掲げてXの字を作り、1曲目のRusty Nailが始まった。
ドームのときみたいに、ステージ前で火柱が上がった。
ステージ後方には大きなハート型のhideのロゴがあったのだけど、Xが登場して曲が始まると、そのハートがスクリーンになった。そこには常にHIDEが映っていた。ちょうど、ドラムを叩くYOSHIKIのすぐ後ろにHIDEがいる感じ。HIDEがXのメンバーを後ろから支え、会場全体を見守っているみたいだった。

Rusty Nailが終わり、TOSHIが叫んだ。
「会いたかったぜーっ!!」
「あじのもとーー!」
「今日はてめぇらの、大和魂見せてくれ、こらーーーっ!!」
「思い切り行くぞーーーっ!!!」

2曲目、SCARS。
ステージ前で、左から右、右から左へとウエーブ状に炎が上がった。この演出はかなり恰好良かった。
SCARSのあと、またしてもTOSHIが吠える。
「大丈夫かー! スタンドーーー!! スタンドーーー!! アリーナ! アリーナ!! 今日はてめぇら全員でかかって来いよ! いけこらーーーっ!!」
出た! TOSHIの「スタンドー!」と「アリーナ!」をやっと生で聴けた。ドームのリベンジ! と感激しつつ、「スタンドー!」の煽りに腹から声を出して答えた。
いつにも増して、TOSHIの気迫が凄まじかった。Rusty Nailの間奏中もずっと、それから曲が終わるたびごとにも、拳を突き上げて「おりゃーー!!」って叫んでいた。叫びっぱなし。
3daysと違って、今日だけのライヴ。「あとがない」から、気合の入り方も並じゃないのかもしれない。それに何より、hideサミットだもんね。hideに届けるんだもの。

YOSHIKIがドラを叩く。叩くだけでは満足せず、蹴り倒す。YOSHIKI、楽しそうだ。ドームの「破壊の夜」とは違って、YOSHIKIの心からの笑顔を見られた。良かった。
「ここまで届かせろー!」とTOSHI。続いて「気合入れろー!」とYOSHIKI。
間髪入れずに、YOSHIKIがピアノでSilent Jealousyのイントロを弾き始めた。
ドームに続いて、またこの曲が聴けるとは! やばいって。興奮と感激MAXですがな。
それにしても、ドラを蹴って叫んだ直後にピアノを繊細に弾くんだもんな。YOSHIKIはやっぱり、ただ者じゃない。
YOSHIKIがピアノからドラムに移動する間、TOSHIがサビをアカペラで歌った。その声が、心地よく体に響く。会場が静まり返った。美しい。美しすぎる。
それから一転して、本来の激しいSilent Jealousyに切り替わる。ドームのときより勢いがあるような気がした。
ペンライトを振る左腕が疲れてきた。でも、振る。歌う。叫ぶ。

Silent Jealousyが終わって、メンバーは一旦退場した。
そして、スクリーンでhideの映像が流れた。X解散後のインタビューや、HEY×3に出たときのYOSHIKIとの掛け合い(食べ物の好みを貶し合う場面)や、4人でYOSHIKIのお宅訪問をするところ……などなど。
せっかく貴重な映像がたくさん流れたのに、音がものすごく割れていて、hideが何を言っているのか聞き取りづらかった。
で、5月5日のWOWOW放送でhideの言葉を確認しようと思っていたら、何とhideの映像集が丸ごとカットされていた……。
(5月6日付の日記には「Xはノーカット」と書いてしまいましたが、ここだけカットされていました)
テレビ番組の映像を多用しているから、権利の問題とかで放送できなかったのかもしれない。まぁ、仕方ないか。

少し待って、YOSHIKI登場。
客席に薔薇の花束を投げたあと、ピアノの前に座った。
そして、目を閉じて俯き、胸の前で手をぎゅっと組んで、祈った。
目を閉じた横顔に、hideへの想いが滲んでいた。このときだけは、「アーティストYOSHIKI」ではなかった。愛する人を亡くしたことでどん底まで悲しんで、それでもなお生き続け、愛する人のために祈る、ただの一人の人間だった。
hide、ちゃんと見えているよね? ちゃんと届いているよね? 10年経っても、こんな表情で貴方のために祈る人が、ここにいるよ。

美しく流れ、心が澄んでいくようなピノソロを終えて、YOSHIKIがにっこり笑いながら客席に向かってピースサインを見せた。
そして、Without You。
今回は、ドームのときより長いフルバージョンだった。間奏では、ドームで出なかった写真も映し出された。
やっと、この曲を泣かずに聴けるようになった。涙の代わりに溢れたのは、やさしい気持ち。世界を丸ごと包み込みたくなるくらい、やさしい気持ちになった。

「生きてることが 時には辛くて 素直になれない 自分を演じてた」

作詞はYOSHIKIだけど、この部分はTOSHIが書いたかのように思えた。TOSHIが歌うからなおさら、彼自身の言葉のような気がした。YOSHIKIがTOSHIの気持ちを代弁して詩に込めた……なんてことはないだろうけれど、この詩が、この歌をTOSHIが歌っていることが、何だか嬉しかった。
やっぱり、この曲はTOSHIじゃないと歌えなかったね。「この曲を歌いたい」って思ったTOSHIの気持ちが、改めて分かったよ。

アンコール前の最後の曲は、紅。
ドーンと火柱が上がる。ステージから客席に向かってテープが飛ぶ。
会場中のエネルギーが爆発して、歓声が鳴り響く。
そのエネルギーを全身で感じながら、私も出る限りの声で叫んだ。歌った。体を揺らした。
TOSHIがサビで煽るように突き出したマイクは、hideに私たちの声を届けるためのものだった気がする。

紅が終わり、TOSHIが「また会おうぜー! ありがとよ! ばいばい!」と言いながらメンバーが退場。
いいところでアンコールだ。さすがにちょっと休憩したい。

(またまた、つづく)


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