月に舞う桜
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スーパーの片隅に、まだまだ小さなスペースだけど、もうバレンタインコーナーが設けられている。
「自分のこと、そんなふうに悪く言っちゃダメだよ」
今更そんな言葉を思い出すのは、どうしてだろうね。 バレンタインコーナーを見たから、ではないと思うんだ。
自分が周りにどう思われているのか気になって、悪く思われる前に自ら悪ぶろうとする気持ちが働いたのかもしれない。 あの頃、自分を悪く言ったのは、傷つかないための防衛手段だった。 今は、そんな必要もなくなった、はず。そう思いたい。
でも、私の本音中の本音は、「悪いヤツでも愛してほしい」ってことなんだろう。あの頃からずっと。 何て勝手な話だ。
いい人だとか強い人だとか頑張り屋だとか思われて、そういう印象を口に出されて、それで息苦しくなる。そうならないための、防衛手段だった。 「傷つかないための防衛手段」っていうのは、つまりはそういうこと。
私の周りにいる人たちのほとんどは、他人に簡単に「善」のレッテルを張って追い込むような浅はかな人じゃない。 私もそれが分かるくらいには大人になったし、レッテルを張られやすい側面ばかり見せていた頃の自分とは違うから、反動としての防衛手段に打って出る必要はなくなった。
でも、「自分のこと、そんなふうに悪く言っちゃダメだよ」って言葉が、思い出されて仕方ないんだ。
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