月に舞う桜
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特別な信仰はない。キリスト教的な意味での神という存在は、信じていない。 でも、ときどき、本当にやりきれないことが起きると、神の存在を願わずにはいられなくなる。 人間だけではどうしようもないこと、身を引き裂かれるような悲しいことや苦しいことがたくさんあって、それで大昔の人はすがるような思いで「神」を発明したのかもしれない。
どうか、この世界に神様がいますように。 どうか、いつでも正しく裁きが下されますように。 どうか、生まれたばかりの小さな命を殺した人間が、のうのうと生きながらえるようなことのありませんように。
いかなる理由であれ、子供、それも赤ちゃんの命を奪うような年寄りは、いくら八つ裂きにしても足りない。 そんな輩が呼吸している上に、さらにやりきれないのは、「気持ちも分かる」だとか「同情できる」だとか言い出す人間が多くて正しい裁きが期待できないことだ。
神様でもいなきゃ、やってられない。
でも、こうも思うんだ。 神様がいるのにこんな世の中って、その方が余程絶望的でやってられなくないか? 正しい裁きがなされないならば、神などいないと思う方が、むしろ救いがあるんじゃないか?
神様はいない。デスノートもない。 ならば、私たち人間だけで、世の中をどうにかしていかなきゃならない。
でも今は、今だけは、どうか神様……。
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