月に舞う桜
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外は気持ち良く晴れ、桜の葉の黄緑がまぶしい。朝から気温が高くて、袖を捲くっていないと暑いくらいだ。 こんな日は、カルピスが飲みたくなる。
カルピスを初めて飲んだのは、幼稚園の年長のときだった。甘いものだから与えないでおこうと親が考えていたのか、私はそれまでカルピスというものを知らずに育ったのだ。 私が通っていた幼稚園では、月に一度、その月生まれの園児をまとめて祝うお誕生日会が開かれていた。 あるとき、そのお誕生日会で小さなカップケーキと白い飲み物が出された。私はその白い飲み物を「いつも飲んでいるものより薄いみたいだけど、たぶん牛乳だ」と思い、その頃から牛乳はあまり好きではなかったので、せっかくのお誕生日会なのになんで牛乳なんか出すんだ! と、ひどくがっかりした。 が、しかし。一口飲んであらびっくり。牛乳とは程遠く、それはそれはおいしい、お誕生日会にふさわしい飲み物だった。 甘くて、でもさわやかな口当たり。それまで飲んだことのない、何とも言えない素晴らしい味が口の中に広がっていく。私がカルピスと出会った、感動の瞬間である。 私が幼稚園でカルピスを知ってしまったので諦めたのだろう、それ以後は親も買って来るようになり、私は晴れて家でもカルピスを飲めるようになったのだった。 めでたしめでたし。
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