月に舞う桜
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私は団地の1階に住んでいるのだが、1階とは言え団地の入り口から玄関までは4、5段の階段がある。それで、ベランダ側に昇降機をつけ、玄関を使わずに自分の部屋から直接外に出られるようにしている。
ベランダ側には、芝生を挟んだすぐ目の前に3本の大きな桜の木がある。今年は、向かって左の木が一番開花が早かった。 仕事から帰って昇降機から桜を見上げると、その左の木は満開に近く花を咲かせていた。 まだ青い空には、白い月が浮かんでいた。 昇降機から見た、その空と月と桜の構図はとても素晴らしく、どの要素が欠けても成り立たないような一体感があるのだった。 月と桜の組み合わせと言うと夜桜を思い浮かべるし、月に照らされて白く輝く桜は幻想的で美しいけれど、まだ明るいうちの月と桜も良いものだ。
桜が咲くと毎年思うことで、去年の今頃の日記にも書いたような気がするけれど、満開の桜を見上げていると何かこの世のものではないような、夢か幻を見せられているような気持ちになってくる。 一気に咲いて、一気に散る。こちらに圧倒的に迫ってくるくらい咲き乱れたかと思うと、あっと言う間に消えてしまう。 夜桜よりも夕方の白い月を従えた桜の方が、明るい中で咲いている分、かえって幻のイメージを強くするようだった。 私は月と桜を見上げて、白昼夢みたいだ、と思った。
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