月に舞う桜
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新年会だった。
待ち合わせ場所へと向かう某駅のホームにて。 その駅には、エレベーターがある。駅の規模のわりにあまり大きくないので、順番待ちをしている人が一度に乗り切れないこともしばしばだ。 私がエレベーター前に着いたとき、すでに女性二人連れ(Åさんたち)と一人の車椅子ユーザー(Bさん)が待っていた。私がAさんたちの後ろに並ぶのとほぼ同時のタイミングで、反対方向から車椅子に乗った男性と付き添いの女性(Cさんたち)がやって来た。 一度に車椅子3台は乗れない。私は、「AさんたちとBさんが乗って、あとは私とCさんたちが譲り合ってどちらかが乗ったら、もう一杯だな」と思っていた。 そうしたら、「Cさんたち」の女性の方が有無を言わせない口調で「車椅子が優先ですから」と言って、Aさんたちの前に割り込んだのである。 その言い方があまりにもきつかったので、「呆気に取られる」を通り越して、ぞっとしてしまった。 いや、違うよ! と思う。 私の認識では、エレベーターは車椅子優先ではない。必要としている人を優先すべきなのだ。 そして、ここが重要なところなのだが、「何かを本当に必要としている人」というのは実は外見では判断できない。もしかすると、Aさんたちは心臓に病気を抱えているかもしれないし、まだ目立たないだけで、実は妊婦さんかもしれない(この駅にエスカレーターはない)。 お互いに必要としている者同士であれば、車椅子だろうが何だろうが関係ない。順番を守って当然なんである。 「必要としている人が優先」というのは私個人の考えなので、百歩譲って常識的に「車椅子が最優先」なのだとしても、もう少し言い方ってものがあるだろう。「すみませんが、先に乗せてもらってもいいですか」という感じで柔らかく言えば済む話だし、Aさんたちだって強い口調で言われるよりは気持ちよく譲れるはずだ。 ものすごくカチンときたので言わせてもらうが、ああいう人たちがいるからなかなか相互理解が進まずに世の中が良くならないのだ!(もちろん、世の中が良くならない原因はそれだけではないが) どんな状況にある人でも気持ち良く且つスムーズに交通手段を利用できるよう、駅にエレベーターを設置するのは当然のことだ。それを「ありがたい」と思う必要はない。 けれども、「利用客」という同じ立場の中にあって、車椅子を使っているからと言って譲ってもらうことは「当然」ではないのだよ。 車椅子というのは見た目にインパクトがあって、エレベーターや場合によっては人の手助けを必要としていることが一目瞭然だ。ほかの病気や障害に比べて、分かりやすい。つまり、どこか問答無用なところがある。 だからこそ、私たち車椅子ユーザーは、他人に配慮を求めるのと同じ(もしくはそれ以上の)強さで、こちらも他人に配慮しなくてはいけないのだと思う。 Cさんたちは、「外見では分からない病気や障害やいろいろな状況にある人たちがいる。Aさんたちもそうかもしれない」ということに、どうして思い当たらないのだろうか。 そして、もう一つ気がかりだったのは、有無を言わせない口調で割り込んできたのが車椅子ユーザー当事者ではなく、付き添いの人だったということだ。 あのとき、当事者の彼はどう思っていたのだろう。「車椅子優先」を当然と思っているのだろうか。それとも、本当の考えは別のところにあって、付き添いの女性の「強さ」に圧されていたのだろうか。
ここで本音。 私が真っ先に思ったのは、「あなたがそんなこと言ったら、私まで同類と思われかねないでしょ!」。 彼らが割り込んだことで、Aさんたちが「これだから車椅子ユーザーは!」(もしくは、「これだから障害者は!」)と思ってしまったとしたら最悪だ。 こうやってどんどん世の中が生き辛くなるんだよぉ、と思う。 「だったら、Cさんたちに注意しろよ!」とは言わないで下さい。「誰が彼らに謙虚さを教えるんだろう」と思いながらも自分は何もしていないことは、分かっているんだよ、これでもね。
前置きが長くなった。 そんなわけで、ちょっとイライラしながら待ち合わせ場所へ。 お忘れかもしれませんが、今日は新年会です。そのために、駅のエレベーターに乗ったのです。
横浜ではわりと有名な時計(毎時ちょうどになると音楽が鳴って人形が出てくる)の下で、メンバーが揃うのを待つ。 お互いに「あけましておめでとうございます」とか「今年もよろしくお願いします」とか言い合っていると、マキさんが旦那さん連れでやって来た。 (マキさんは、初対面のときに歌手の大黒摩季に雰囲気が似ているなと思ったので、そう呼ばせて頂く) マキさんの旦那さんは、すらっと背が高く、とても感じの良い方で、ものすごく素敵なオーラを自然に出していた。俳優の渡辺謙を10歳ほど若くして眼光をもっと優しくしたら、似ているかもしれない。私たちは皆、旦那さんとは初対面だったのだが、誰もがお会いした瞬間に「さすがマキさんの旦那様だわ!」と思ったに違いない。 お二人は、夫婦というよりは恋人同士みたいだった。デパートに消えていく旦那さんにマキさんが手を振っている、その仕草やたたずまいも含めて。
新年会は飲み放題つきのコース料理だった。コースの品数が半端じゃなく、次から次へと出てくる料理に皆で圧倒された。 前菜のオードブル、サラダ、鶏の照り焼き、塩ちゃんこ鍋、牡蠣、エビチリ(と言うか、酢豚の豚をエビしたようなもの)、ソーセージ、ピザ、たらこスパゲッティー、牛肉と野菜の炒め物……たぶん、こんな感じだった。 とても食べきれない量の料理を少しずつ減らしながら、最近どうしてるだとか、これからどういう方向で勉強していけばいいかだとか、やはりそういう話が中心になる。 ひょんなことから「歌を歌いたい」という話になり、南さんと二人、俄然盛り上がる。 (南さんは高校時代に野球部のマネージャーをされていたそうで『タッチ』を連想したのだが、よく考えると「南ちゃん」はマネージャーではなかったよな…) 私が「第九を歌いたい」と言うと、横から「友達が年末に第九歌ってるよ」とマキさん。南さんが「ゴスペル習いたい」と言えば、「ゴスペルやってる友達もいるよ」と、またまたマキさん。マキさん自身は歌に興味がないそうなのに、何て顔が広いんだ! と南さんと驚いた。 ゴスペルでも第九でもいいから、実現させたいなと思う。実を言うと、歌はかなり下手なのだけど……。
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