竜也語り

2005年05月26日(木) 隣の芝生は青い?

5月病ではないが、時折今とは全く違った職種にたまらなく就きたくなることがある。その半分は月単位で流れていく仕事をやっていると、何もないまっさらな状態から一つずつ手塩に掛けてモノを作っていくような仕事に憧れるのだ。職人のように材料調達から完成まで、ずっと独りで黙々とやっていたい…そんなことを考える。
私はどちらかと言えば一日中一人で仕事をやっていく方が好きだ。別に喋りが勝負という仕事をしているわけではないが、それでもそれなりに人と関わらなければならない。人間は人間を相手にしている時が一番楽しいこともあるが、同時に一番疲れるものだ。どうしてこうも同じ人間同士理解しあえないのか…宇宙の七不思議の一つではないのか。もちろん職人のような仕事も、また違った苦しみがあることは十分想像出来るつもりではいる。

今、ウチの会社の道路を挟んだ向かいのビルが取り壊され、そこに分譲マンションが新しく建設されている。古いビルが壊される直前の足場の取り付けからずっと見てきているのだが、これが非常に楽しいのだ。古い物を壊して土地をまっさらにし、そしてまた新しい物を作っていく…この一連の作業がたまらない(笑)。もちろん一人の人間がずっとそれらを担当しているわけではないが。
私のいる部屋は4階で、そこの窓からこの現場がよく見渡せる。この工事が始まってから、用も無いのに窓際に立ち外を眺めている時間が多くなった(←当然工事の様子を見るためよん)。面白いことにそれは私だけではなく、数人の同じフロアーの連中がこれまた同じように楽しそうに眺めている。特にショベルカーみたいなものが3台ほどやって来て、ビルを壊している様はいつまで見ていても飽きなかった。大・中・小のショベルカーもどきがそれは見事に鉄筋を掴み崩していく。それは人間の手と言うよりかはカマキリのカマを連想させた。あまりにも生々しくカマ(?)を動かすので、次第に私達はそれらにもう生き物に対するような愛情さえ覚えてしまったのだ。おかしなもので、あんなごっついショベルカーでも小型のものは可愛らしい(笑)。「あいつ(←一番小型のショベルカーのこと)、カワイイなぁ…」とそんな声がどこからともなく聞こえてくる。皆何故か口には出さないが、その目は全く同じことを語っている。「面白そうだなぁ…やってみたいなぁ…」。私だって例外ではない。特にあのチビのショベルカーを操作してみたいーっ!!とムズムズしてしまうのだ。

皆の憧れの的となっているとは知らずに、ショベルカーを操作している職人達は、それしか目に入らないと言ったようにひたすら自分の目の前にある瓦礫だけを見つめ手元を動かしている。黙々と…黙々と…。彼等は私がのこのこ近付いて行って「この小さなショベルカー、可愛いですね♪」などと話し掛けたらどんな反応を示すだろうか…。そして「いいですね、一日黙々と仕事ができて。私もたまにこんな仕事に憧れるんですよ。こんな仕事やってみたいです!」なんてことをぬかしたら…。彼等は黙々と私に拳を飛ばしてくるかも知れない…(恐)。


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