竜也語り

2005年05月21日(土) 黎明前(19)

☆ドラマ☆


●「それが答えだ!」 Symphonie Nr.6

「生徒たちの涙」
ある日鳴瀬のものとに1通の手紙が届いた。差出人は「ウィーン中央フィル」。やっと世界の桧舞台に戻るチャンスがやって来たのだ。もう鳴瀬の頭には白八木中オケ部コンクール出場のことなどない。「俺達を放って、途中でいなくなっちゃうなんて酷いですよ…」と目を潤ませ懇願する池田を無視して、着々とウィーン行きの準備を始めた。そんな鳴瀬に教務主任の有理子は諭す。「子供達は凄く純粋にコンクールとか、音楽とか、楽しみにしているんです……あなたは最後にはこの村を出て行けばいいでしょうけど、でも私や他の先生達はこの村に残るんです。気楽に辞めたり、出て行ったり出来ないんです。」 友理子のこの気持ちはわかる。よそから来た者に気まぐれに掻き回され、あげくにその尻拭いもせずに“あばよ”と言われた日には…こんなに腹の立つことはない。それに後に残った大人達はどうやって子供達を納得させればいいのか…?考えただけでも途方に暮れる。

そんなある日、先日奏の件でケンカをした不良達が夜、白八木中に忍び込みケンカの仕返しにオケ部の楽器をめちゃくちゃに壊してしまった。次の日の朝、生徒達は呆然と悪夢の中のように自分の楽器をいじっている。後からやって来た鳴瀬も一瞬辛そうな表情を見せたがすぐにそれを隠し、これでウィーンへ心置きなく行けるとうそぶいた。本当は楽器を壊され一番傷ついているのは鳴瀬なのだ。子供達も少しの間は意気消沈していたが、その内楽器を自分達で直し始めた。

ウィーンへ旅立つ日、鳴瀬は直接バス停に向わず学校へ立ち寄ってみる。工作室から池田や生徒達が笑顔で楽しそうに楽器を直している。その姿を目撃して少し驚いている鳴瀬のところに池田がやって来た。「子供達はいつまでも鳴瀬先生を待っています。音楽を教えて頂いて本当に有難うございました。」何か吹っ切れた笑顔で頭を下げる池田に「悪かった…」と鳴瀬はやっとそれだけ絞りだすように言い、バス停へ向った。
駅に到着し電車を待つ鳴瀬の頭の中に子供達の顔がフラッシュバックのように現れる…。それでも鳴瀬は汽車に乗った。

次の日子供達は徹夜をして直したツギハギだらけの楽器を弾いてみる。しかしちょっと触れただけでまた直ぐにそれは壊れてしまった。土台楽器の修理など無理だったのだ。それまで明るく頑張って笑顔を絶やさなかった子供達もとうとう皆泣き出してしまった。そんな子供達に向って池田は言った。「皆よく頑張った!泣くだけ泣いたら皆で野球をやろう!」 池田のその言葉を受けて「うん、野球しよう、野球しよう!」と泣き笑いの生徒達。私はここで不覚にも涙うるうる…。
その時校庭に1台のトラックが入って来た。何故か鳴瀬も一緒だ。自分のCDが売れウィーン行きの元手となったお金300万円。この資金を全部使って子供達に新しい楽器をプレゼントしてしまったのだ。もちろんこれで鳴瀬のウィーン行きはオジャンになってしまった。人間は他者に関れば関るほどやっかいで悩まなくていいことまでにも悩むハメになる。しかしそんなわずらわしさも自分を豊かにしてくれる…これも事実なのだ。

□6話の演也□
「白八木中オケ部を励ます会」と銘打たれたバーベキュー大会。バーベキューを早く食べたくて皿を持ちながら「早くオレにもちょうだいよ〜」と見栄も外聞もなく本能の赴くまま要求し、食欲旺盛な演也だった…。

鳴瀬のウィーン行きが決定した時、「マエストロやめちゃうのかよ〜」と不安そうに池田にぶつける演也。態度はまだ少し反抗的でも、もうすっかり鳴瀬を好きになってしまったようだ。来るのか来ないのか分らない鳴瀬を音楽室でチェロを抱えじっと待っている演也には、いつものやんちゃな面構えは消えてしまっていた。そして鳴瀬が音楽室へ入って来た時、ぱっと顔に射した笑みはいい笑顔だった。こんな子を置いてウィーンなんか行けないでしょ…普通…。

不良達に無残に壊されてしまった演也のチェロ。「きっとあいつらだよ…この間の不良の…」と顔を歪めたが、皆と一緒になって徹夜で楽器を修理する。「こんなんでちゃんと音が出るようになんのかよ〜」と相変わらず口は悪いが一生懸命手を動かしていた。
さていよいよ自分達で修理したチェロを弾いてみる。池田を見つめ意を決したように頷いて…。しかし弦に触れた途端、チェロを支えている脚はべチャと潰れてしまった。当然演也も皆と一緒に泣き出してしまい…俯いて静かに泣いている顔は長い睫毛を際立たせていた。
「皆で野球やろう!」律子の言葉に反応し、振り返り「うん、うん」と頷いている素直な笑顔の演也はいじらしく…。今回はうるうる。なかなかいいドラマかも知れないな。

***今回のつぼ***
・「みんな腹減っていないか?じゃあ先生が山へ行って食べ物を採ってきてあげよう!」by池田。…こんな環境で育っていたら、私の人生違ったものになっていたのかねぇ…。
・俯いて泣く演也…でも涙が出ません…まだまだ感情移入が出来なかったのかな??


 < 過去  INDEX  未来 >


ATSUKO  [HOMEPAGE]

My追加