竜也語り

2005年04月26日(火) 気が付けば…

4月1日になると真新しいスーツを着た新社会人が電車の中で目立つようになる。面白いことに彼らはすぐにそれと判断出来るのだ(笑)。一つは異様に新しすぎるビジネススーツとそれを着ている今一つ板に付いていない姿(これを初々しいとも言うが)…。そして何となく強張ったような表情。何時ぞやの4月1日。私と同僚は地下鉄に乗っていた。私達の前には“コイツは絶対に新人だ”と一目でわかる青年が立っていたのだ。電車がホームに到着しドアが開いても、彼は真中で突っ立ったまま端に寄ろうとしない。恐らくこれから始まる入社式のことで頭が一杯で気もそぞろだったのであろう。しかし私達はその駅で降りたいのだ。“邪魔だな”と私が思った矢先、「オラオラオラ〜ッ!邪魔だ邪魔だ〜、どけどけーっ!」とばかりに一緒にいた同僚が乱暴に彼を押しのけた(汗)。降りてから私は「あそこまでやらなくても…」と言ったら、「何言ってんだよ!? 真中でボケーッと突っ立っててよ。社会の洗礼だよ。セ・ン・レ・イ!!」と何の悪びれもなく言ってのけた。どうも人間は年下の異性には甘く同性には厳しいようである(笑)。ウチの会社では新卒者は採用しない。最低でも3年以上の社会人生活経験者を必要になったら中途入社させるのだ。まぁこれは正解かもしれない。こんな大人気ない連中ばかりいるのだ。新卒の子だったら、直ぐに辞めてしまうだろう(苦笑)。

今ではお局を通り越しプチ皇太后ヅラしている私であるが(←事実、後10年もすれば本当の皇太后になれるのさぁ)、こんな私でも新入社員とか若手と呼ばれる時代があった。前の会社に勤めていた頃がそれだ。
新入社員の時、約2週間の新人研修が終了し、皆同期はそれぞれバラバラになった。私も配属先が決まり、1日目は部内の挨拶回りで殆ど終わったが、次の日から本格的に仕事が始まった。私に付いたのは今で言う“お局さん”。男性からも女性からも恐れられていた人だった。「まずこの伝票全部の合計を出して」と渡されたその伝票の束は、高さ30cmはあったと思う。それなのに私は、その伝票の束の一番上から、自分のそろばんの腕の未熟さも省みず(当時はまだそろばんが使われていたのよん)一番下まで一気にそろばんを入れようとしたのだ。「あなた! もっと頭を使ってやりなさい!」 これが私が仕事を始めて一番最初に頂戴したお言葉だ(笑)。「こんなに沢山あるのに一遍に入れることなんてあなだでは無理でしょ?幾つかの束に分けて、それでそろばんを入れるの。そして最後にそれぞれの束の合計をまた合計するの。そうした方が簡単でしょ?」…なるほど…今にして思えば、そんなことちょっと考えれば思いつきそうなことだが、当時の私はこんなことも考えられない馬鹿だったのだ…。一番最初に言われたことは強烈に頭に残る。「もっと頭を使ってやりなさい」この言葉は今でも仕事において私の座右の銘となっている(笑)。
彼女は周りから訳もなく非常に恐れられていたので、「大変ね」なんて他の先輩同僚や同期の子から同情されたが、私は2年間彼女について行った。そして色々なことを学んだ。仕事が変わった今でも決断の判断基準となるのものは、この頃彼女に教えてもらったことだ。実は当時も周りが思っているほど私は大変でも辛くもなかった。なぜならば彼女は気は強かったが意地悪ではなかったからだ。人間意地の悪いのは始末におえない。いくらニコニコ愛想がよく人当たりが柔らかくても性根の悪い奴は…もうどうしようもねぇよ!と、性根の悪い私が言ってみる…。時折彼女と退社後、食事をしたりお茶を一緒したりしたが、そんな時彼女は仕事の話は一切しなかった。お互いの趣味の話や友人・家族のこと、そして恋の話などなど…そんな話で私達は盛り上がっていたのである。こんな彼女を知っていた人は少なかったように思える。
前の会社に在籍していた約5年間、私は彼女だけではなく数人のベテランと言われる女性達と一緒に仕事をする機会があった。その殆どは気が強かったが(笑)、噂ほどヒステリックな恐ろしさはなく、そして言っていることは間違っていなかったと思う。結局人間なんてある程度深く付き合ってみなければ本当のところはわからないのだ。まぁ当然と言えば当然のことだが。

さて問題はこんなことではない。一番の問題は…気がつけば私はもう当時の彼女達の年齢を越えてしまったということだ。この事実にはかなり驚く。それにしては彼女達に比べ今の私はあまりにも幼稚でなないか!? あの頃私の目に映る彼女達は随分と大人で落ち着いていて…そして私達の間にはしっかりといい意味での一線が画されていた。果たして彼女達ははるか年下の俳優の雑誌をせっせと切り抜いていたのだろうか?グッズを集めをして喜んでいたのだろうか?甚だ疑問である…。
今はたまたま会社に同じ竜也くんのファンがいないだけであって、もしここで22〜3歳の竜也ファンが入社してきたら、私はその子と一緒になって昼休みにでも嬉々として雑誌を切り抜くなんてことをやらかすかも知れない。それだけでは済まず、仲間ができたことで気が大きくなり、Daから送られてきたツアーのちらしを二人で部長のところへ持っていき、「これ行かせて下さ〜い!休暇くださ〜い!」なんて駄々をこねる…なんてこともやってのけるかも知れないのだ。そこには一線も何もありゃしないよ。いや…別に一目おいて欲しいとか、尊敬して欲しいなんてことは少しも思っていないんだけどね…。


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