2008年06月29日(日) |
子どもになったおいちゃんたち |
今日は、最近読んで、 とても心に残ったお話紹介です。 今日のお話は、
「ひと言の奇跡」 金平 敬之助さんの書かれた本からです。 金平さんは、こう言います。
「日ごろ口に出す 「ひと言」を大切にしたい。 たったひと言が「奇蹟を生む」 こともあるからだ」
そんなひと言の奇蹟が いっぱい書かれているおすすめの本です。 短い文章、読みやすい構成なので、 本を読むのが苦手という方にも ぜひ、読んで頂きたい本です。
今日は、この本から、 「子どもになったおいちゃんたち」 の話を紹介します。
「子どもになったおいちゃんたち」 (※強調はこちらでしました。ここから引用)
Aさんは71歳。 北九州の炭坑の町に生まれた。 小学校時代、徒競走はいつもいちばん、 運動会では花形だった。 家は貧しかった。
卒業後、商店の小僧さんになった。 朝早くから夜遅くまで働かされた。 遊ぶ時間はなかった。 やがて敗戦。
石炭ブームが起きた。 Aさんは炭坑で働くようになった。 地下3千尺で真っ黒になって石炭を掘った。 休みの日はなかった。
地上ではスポーツが花盛りになった。 野球選手の真っ白なユニホーム。 Aさんはとくに憧れたという。 その石炭が石油にとって代わる。
山は廃坑。 町は寂れた。 Aさんはこんどは、職探しだった。 肉屋を開業。 なんとか生き残った。
気がつけば70代の おじいちゃんになっていた。 似た経歴、同じ思いの人がいた。 酒屋のBさんと、大工のCさんだ。 共に70代。
ある日、3人揃って、 小学校のF先生に夢実現を頼んだ。 「ソフトボールをやりたい」 「真っ白なユニホームを着てみたい」 3人の願いに、F先生はほろりとした。
でも、いった。
「9人揃わない。ムリたい」
落ち込むおいちゃんたち。 先生は代案を出した。
「テニスだったらできる」
3人は顔を輝かせて、 筑豊弁で叫んだ。
「いいち!」
そして、いま町営のテニスコートで、 白いユニホーム姿のおいちゃんたちが、 子どものように嬉々としてボールを 追いかけている。
3年経った。 気がつけば、テニス仲間は16人に増えた。 65〜78歳までの人たちだ。 うち2人は女性。 月水金がテニスの日だ。
冬でも朝6時過ぎから、F先生を迎えに来る。 先生は学校がある。 早めに切り上げる。
でも、自分たちは午前中いっぱい プレーをしているらしい。 利用者がなく、草ぼうぼうだった 町営テニスコートだった。 それを、おいちゃんたちは見事に蘇らせた。 プレー姿は楽しそうだ。
年齢から、できても あと10年か15年、 と思うのだろう。 それはていねいに一球一球を いとおしそうに打っている。
先生が驚いたことがある。 試合が終わったときだ。 おいちゃんたちは教えもしないのに握手を交わす。 ボールを競いあって拾い集める。 帰りはコートに一礼する。 マナーも一流だ。 その和気あいあいの姿に仲間も増えるはずだ。
そして、ステキなのはテニスウェアだ。 父の日、誕生日、敬老の日ごとに新しくなる。 それを照れながら着てくる。 シューズもブランド製。 ラケットも最高級品だ。 F先生のよりはるかに上等だ。 身支度はまさにウィンブルドンの選手並み。
今は郡のテニス大会にも団体戦で活躍している。 地元の人気チームだ。 一回戦は必ず勝っている、という。
おいちゃんたちは なぜすぐに テニスを好きになったか。
私はF先生の感性のよさの おかげとみる。 テニスは簡単ではない。 しかも、初体験の高齢者だ。(略)
F先生の指導がみごとだ。 「ああだ、こうだ」とうるさく教えない。 ラケットの握りも各自勝手だ。 教えたのはボレーの打ち方だけ。 (略)
そして、練習なしで試合ばかりさせた。 ダブルスだ。 ルールは試合中に教えた。 最初から楽しさいっぱいだ。 打ち方はまったくの自己流。 カット打ちばかりするもの。 ポンと空高く上げて打ち返すもの。 さまざまだ。
それでも試合になるから おもしろい。 用語も覚えた。 得意げに「サーティ・ラブ」と 叫んでいる。
こんなおいちゃんたちの誕生は、 「人間にやさしい、人間を知っている」 F先生がいたからではないか。
ここまで引用
この話を読んで、 イキイキとテニスをしている おいちゃんたちの楽しそうな、 姿が目に浮かんできた。 見ているコチラまで幸せな気持ちになる、 そんな姿が… きっと家族みんながこんなおいちゃんたちを 応援し、あたたかく見守っているに違いない。
F先生もすばらしいけれど、 このおいちゃんたちの生き方が 溌剌としていて、今を生きている姿が すばらしいと思った。
こんな楽しんでいるおいちゃんたちが いっぱい増えたら、今の若い人も、 未来に楽しい思いを描けるのではないか、 イキイキと楽しそうな、 おいちゃん、おばちゃんが もっともっと増えるといいなと思った。 そして、そんな生き方ができる環境が もっともっと広がっていくといいなとも。
「おいちゃんたち、苦労した分、 これからうーんと楽しんでね。 すばらしきおいちゃんたちに乾杯!」
心から、そう思ったのでした。
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