2007年06月11日(月) |
街で出合ったおばさんから、聞いたお話 |
私は、ウォーキング中、出合った人、 特にお年寄りの方とか、犬と散歩中の方には、 「こんにちは」と、声をかけるようにしている。 怪しまれない程度にだけど。
でも、その挨拶から、ちょっとした会話に つながっていくこともある。 今日は、そんなちょっとした出会いのお話です。
先日、 1人の杖をついた散歩中(買い物かも)おばさんに、 いつものように声をかけた。
「こんにちは」
すると、おばさんは立ち止まり、 私の顔をみてこう答えた。
「あらぁ、どちらさんでしたかしら? このごろ、とても忘れやすくてね」
私は、マスクをしていたので、 あわててマスクを取りこう答えた。 (マスクは、喉を守るためにしていることが多い)
「あ、失礼しました。 いえいえ、知り合いではなくて、 ただ声をかけただけなんですよ」
すると、おばさんは、 私の顔をまじまじと見て こう聞いてきたのだ。
「あらっ? 斎藤さんのお嬢さんじゃない? 戻られたの?」
私は、あわててこう答えた。
「いいえ、違います、斎藤さんではないです。 通りすがりの者です…」
すると、そのおばさんは、 こんなことを話しだしたのだ。
「あ、違った?ごめんなさいね。 ちょっと似ていたような気がしたから。 斎藤さんのお嬢さんも、あなたと同じくらいの 年齢だと思うのよ。 でも、そうね、ここにいるはずはないわね… いなくなってしまったんだから…ね」 「え、いなくなったんですか?」
「ええ、そうなの、もう10年以上も前にね、 どこかへ行っちゃったらしいのよ…。 子どもとダンナを置いてね、いなくなったのよ。 斎藤さんは、あちこち探してね、警察へも届けて。 でも、行方はわからなかったの。」 「ああ、そうだったんですか… で、まだ見つからないんですか?」
「最近、斎藤さんに会ってないから、 その後の話はわからないけど、 多分見つかってないと思うわ。 斎藤さんも、今は動けないからね…気の毒だわ」
どうやら、斎藤さんの娘さんという人は、 女の子1人とダンナを捨てて、男とどこかへ 行ってしまったらしかった。 当時は、大騒ぎをしたらしい… そして、斎藤さんちでは、その娘さんをあちこち 探したらしいのだが、見つかってないと言うことだった。 どうやら、その娘さんと間違われたらしい。
話をしているうちに、私は、 その子どもとダンナさんがどうなっているか とても気になってきて、思わずこう聞いた。
「そのお子さんと、ダンナさんはどうなったんですか?」 「それがねぇ…お子さん置いて、ダンナも いなくなってしまったらしいのよ…」 「えっ、ダンナさんもですか?」 「そうなの。だからね、 斎藤さんはとっても苦労したのよ… だから、私も気になっててね…」
「じゃ、お子さんを育てたんですか?」 「そうなのよ、斎藤さんが育てたのよ。 でも、もう大きくなって、そのお子さんが、 斎藤さんを見てるって聞いたわ」 「ああ、そうですか…それはよかったわ。 育てた甲斐がありましたね」 「そうね…斎藤さんも助かっているわね、 そうね、甲斐があったわね……」
おばさんも、そう言うと、大きく頷いた。 そんなわけで、立ち止まって話をしただけで、 私は、斎藤さんちの家の内情を相当詳しく知り、 思わず、斎藤さんに同情してしまった。
でも、斎藤さんは、その育てたお孫さんと いっしょに、助け合って暮らしているようなので、 (それが本当かどうか、わからないが…) なんとなく、ホッとしたのだった。
それで、 最後にこう言った。
「斎藤さん、これからもお孫さんとうまく、 幸せに暮らせるといいですね。 娘さんは見つかるかどうかわかりませんけど…」 「そうね、ホントよね。苦労したんだから… そうだわ、斎藤さんに久しぶりに連絡してみるわ。 今日は、どうもありがとう」 「いいえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
私は、おばさんにさよならを言い、 おばさんと別れたのだが、苦労した斎藤さんが、 今は、心穏やかで幸せであることを心から祈ったのだった。
そして、おばさんも、 元気でいてほしいと思ったのでした。
「おばさん、またね、そして、 斎藤さんに連絡してみてね」
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