2007年05月30日(水) |
頑張る荷車とおじさんのお話 |
先日、いつものようにウォーキングをしていると、 私の目の前に突然、台車というか、荷車というか、 が、現れたのだ。 おじさんが、その車を引っぱっていた。
「あららっ、にぎやかな荷車だね、 何する車かしら?」
私は、この荷車を追うことにした。 すると、間もなく、野菜屋さんの前に止まったのだ。
「おっ、止まったね、 なんだろう、どれどれ」
と、近寄って、まじまじと荷車を見てみたら、 それなりに凝った作りをしていることがわかった。 なぜか、オレンジ色のバラの花も一輪飾ってあるし、 キラキラとするような素材のものも使っているし、 そして、必要なものが、取り出せるように、 荷車の回りにキチンと配置されていた。
おじさんをみると、野菜屋さんの脇にある 飲み物の自動販売機の空き缶を拾っていた。
私はこのおじさんに 声をかけてみることにした。
「おじさん、こんにちは。この車、 写真撮ってもいいかしら?」
すると、おじさんは、びっくりして振り返り、
「写真?この車を?いいけどなんで?」 「あのね、インターネットにのせるの」 「あ、そう。どうぞ、好きに撮っていいよ。 うん、確かに、日本に一台しかないからね(笑)」
「あ、そうだ、確かに日本に一台だね。 これ、おじさんが作ったの?」 「そうだよ、いろんなものを集めてさ。 全部手作りだよ。」
ということで、私は写真の許可をもらい、 日本に一台しかないこの荷車の写真を撮ることにした。
中はこんなふうになっていた。
そして、今、拾ったばかりの空き缶が 少しばかり入っていた。
とても興味がわいたので、 おじさんに再び声をかけた。
「ねぇ、おじさん、缶ってどのくらいで 買ってもらえるの?」 「そうだねぇ…この箱いっぱい分くらいで、 2600円くらいかな。」
「じゃ、これいっぱいは、どのくらいで集まるの?」 「あのね、日によって違うんだ。あのね、 月曜と水曜はよく集まるんだ。」 「月曜と水曜?どうしてなの?」 「何でか知らないけど、月曜と水曜は、わりと すぐに集まるんだ。他の日は、時間がかかる。 でも、一晩あれば集まるよ」
ということで、この箱いっぱいで2600円。 だいたい一晩かかることがわかった。 おじさんは、毎日空き缶拾いをしているということだった。
「で、おじさん、この缶はどこに売るの?」 「週に一回埼玉の方から買い取り業者がくるんだよ。 それまで、取っておくんだ。 そして、まとめて金曜日にお金にするんだよ」
「じゃ、どこかにこれを置いておくのね?」 「うん、場所は言えないけど、ある場所に置くんだ。 見つかったら、持っていかれちゃうからね。」 「そんなこともあるの?」 「うん、やっぱりライバルはいるからね。 気をつけないとね」
ということで、このおじさんには、 ライバルがいることもわかった。 そして、おじさんの楽しみが、金曜日の夜、 お金をもらってから、飲むいっぱいのお酒であることも。
私がおじさんに、 「いっぱい集めて、いっぱいもうけてね、 今日はどうもありがとうございました。」 とお礼を言うと、ニッコリと笑って頷き、 元気に荷車を押して、次の場所へと向かっていった。
笑ったとき、おじさんの歯が大分なくなっていることが わかって、私は少し複雑な気持ちになった。
「おじさん、元気で、空き缶集めしてね」
私は、心からそう思ったのでした。
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