まゆのウォーキング、ぼちぼち日記

2006年10月04日(水) 車イスのおじさんと若者と

私は、ウォーキングの最中に、
街のカフェや、こじんまりとした喫茶店や、
ホテルのティルームでお茶を飲みながら、
本を読むことが好きである。
もちろん、ファーストフードも大好きである。
これは、私にとって、とっても
幸せなひとときなのである。

そんなわけで、先日、
オープンカフェスタイルのマクドナルドで
お茶タイムを取り、休んでいこうと思った。
今CMでやっている、マロンパイなるものも
食べてみたかったしね。


さて、この日、
思いのほか、マクドナルドは混んでいて、
オーダーカウンターにある3つのレジの前に、
お客さんが結構並んでいた。
私は、いちばん奥にあるレジに並んだ。


ふと見ると、私の列の一番前のお客さんは、
車イスに乗ったおじさんで、オーダーを終え、
マクドナルドの店員がおつりを数えて、
お札から先に、そして小銭と、渡したりしていた。
おじさんはそのたびに、大儀そうに、
そのお金を小さなバックに入れていた。
その後、オーダーが全部揃うのを
待つことになった。

そのおじさんは、荷物をいっぱい
車イスにつけていて、動きが悪そうだった。
ちょっと端によってくれれば、
次の人のオーダーが出来るのだが、
荷物いっぱいだし、混んでいるので、
車イスも思うように動かせない状態だった。



マクドナルドの店員は、おじさんに、
「少しお待ちくださいね」と声をかけて、
次の人に、少し大きな声で、オーダーを
取るということをしていた。

私は、3番目くらいの位置でその状況を見ていた。
そして、あのおじさん、大丈夫かなと
心配になってきていた。

やっと、おじさんのオーダーが全部揃って、
おじさんに手つきの袋が手渡された。


すると、おじさんは、何も言わずに、
車イスを突然バックさせた。
後ろにいたお客さんは少し驚き、あわててどけた。

そして、さらにもっとバックさせると、
マクドナルドの袋を下に置き、
車イスの後ろの荷物引っかけのようなものに、
体をねじって、その袋を取り付けようとした。
しかし、その荷物を引っかけるところには、
すでに、3つの袋がぶらさがっているので、
取り付けがとてもむずかしいようだった。

すると、おじさんは、
その先につけていた3つの袋をいったん
地面に置き、取り付け直し始めた。
どうやら袋の順番を変えるようだった。
おじさんは、体を辛そうにひねって、
あれこれやっていた。
周りで、オーダーを待っていた人たちは、
上手に場所を空けて、その様子を見守っていた。
しかし、結構場所を取られるので、
列は、斜めになっていた。



おじさんのその様子が、
とても不安定に見えたので、
私は、おじさんに、声をかけることにした。


「何か、お手伝いしましょうか?」


すると、
おじさんは、こう言った。


「一人暮らししているので、
 手をかけないでください。大丈夫です。
 坂を下ればすぐのところなので…」



私は、少し驚いたが、
手を出されることを嫌いな方もいるので、
そうか…と思い、手伝うのをやめた。

すると、私の後ろにいた、若い男性が、
「でも、落ちそうですよ、手伝いますよ」
と、おじさんに再び声をかけた。


するとおじさんは語気あらく、
小さな声だが、はっきりと、


「いいんですっ!
 手を出さないでください。
 いつも一人でやってますから」
と言ったのだ。



若者は、少し困惑した顔をした。
私は、あら大変…と思ったが、
おじさんの一人でやるという気持ちも
なんとなくわかったので、
その若者に、
「たぶんね、やり方があるんだと思うわ。
 人にやってもらうと、後で取るのが大変とかね」

と、言って若者を引き止めた。


その若者は、私の言った言葉に素直に頷き、
手を貸すのをやめて、その代わりに、
おじさんがもっと作業しやすくなるように、
スペースをもう少し空けるように、
待っているお客さんたちに声をかけてくれた。
お客さん達は、黙ってスペースを空けてくれた。

この若者は、たいそう感じがよく、
福山雅治似で、白いTシャツがとても清潔感
あふれる、ナイスガイだった…
なんて、感じのいい若者…
今どき、こんな人がいるなんてね、
などと私は、見とれてしまった。


なんてことはさておき…


そうこうしているうちに、私の順番がきた。
おじさんは、後ろの方でまだごそごそしていたが、
気にしないようにして、
オーダーをお願いすることにした。

すると、マクドナルドの店員が
小さな声で、こう謝った。


「すいません、いつも来るお客さんなんですが、
 いつもああなんです…気にしないでくださいね」
「ええ、大丈夫です。手を出されるのを
 嫌がる人もいますからね、余計なことをしても、
 相手には、迷惑になることもあるから」



どうやら、常連さんで、
たびたびこんなことが繰り返されているようだ。

確かに、目の前で、とても大変そうに、
大儀そうにされると、本人の意志はともかく、
声をかけないのもどうかな…と思ってしまう。
この辺りがむずかしいのだけれど、ともかく、
私は、声をかけることにしている。
こんなふうに断られてもね。


私は、かつて、ボランティアで車イスの方々の
世話をしたことが何度かあるので、
その方々の気持ちも少しはわかるところもあった。


以前、その方々がこう言っていたのだ。
「半端に手伝われると、かえって面倒になるの。
 手伝ってくれて悪いから、言いたいことも
 言えないし、かえって気を使うこともあるの」


その時、障害者の方に、
手を貸すという行為について
かなり考えたのだった。



さて、私のオーダーも全部揃って、
私は、オープンカフェ側に席を取った。

おじさんを見ると、店の外に出て行くところだった。
私はおじさんの姿を見守った。
おじさんは、店を出て、歩道に出て出発しようとした。
その瞬間、取り付けていた袋がひとつ落ちたのだ。


あっ…


私は、どうするのかとハラハラ見ていたが、
おじさん、今度は歩道で、
また荷物の取り付けをゆっくりと初めていた。





このおじさんは、一人暮らしだと言うから、
おそらく、何でも自分でやっているのだろう。
そして、あまり外に出ることがなく、
外に出たときに、まとめて買い物をしているのだと思う。
きっと、一人でやるということが、
おじさんの気持ちを支えているのだと思う。


このおじさんは、こうして、
一人で生きているのだと、実感した。



おじさん、気を付けてね、元気でね、
でも、バックするときには、
周りを確認した方がいいし、歩道はもう少し
邪魔にならないように気を使った方がいいと思うな、
と、私は心で思ったのでした。
(手を貸すより、こう言ってあげた方が、
 よかったかもしれないなぁ…)

また、あのようにステキな若者がいることを、
何となく嬉しく思ったのでした。





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