2006年08月24日(木) |
ネコおばさんたちの怒り |
いつものように、夕方ウォーキングをしての、 帰り道のことである。
今日は、遠回りにはなるが、 気持ちのいい道があるので、その道を戻ることにした。 いいね…夕日がキレイだわ… そう思いながら歩いていると、 ネコたちがたむろしているのが見えた。
あっ、ネコさんだ!
私は、犬のネコも大好きなので、 必ず声をかけることにしているのだ。 今日は、ネコさんが何匹も見える。 よーし、また声かけよっと、 と、どんどん近づくと、 そして、よーく見ると、
1人のおばさんが、そのネコたちに ごはんをあげているのだとわかった。 このネコさんたちは、のらネコらしい。 そして今は、ごはんタイムらしい。
私は、近づいて、おばさんに声をかけてみた。 「こんにちは。ごはんあげているんですか?」 すると、おばさんは、びっくりしたように、 「ええ、まぁ…」 とことばを濁して、後ずさりする。
どうやら、私がネコにごはんをあげることを 非難するのではないかと思ったらしかった。 こうして、のらネコ達にごはんをあげていることを、 誰かに、非難されているのかもしれない。
私は、そうわかったので、 「ご苦労さまです。かわいいネコたちですね、 とてものらネコとは、思えない毛並みですねぇ」 と、ネコたちの側によりながら言った。 ネコたちは、なかり警戒している。 そして、おばさんが話をしてくれるかどうかは わからなかった。
しかし、おばさんは、 「そうね、毛並みはいいわね…」 とぼそっと答えてくれた。
ここにいるネコたちは、 みんなかなりいい毛並みをしている。 ほら、こんな。
おばさんが答えてくれたので、また聞いてみた。 「何匹くらいいるんですか?」 「7〜8匹だと思うけど、日によって違うわね」 「そんなにいるんですか…、じゃ、大変だ」 私は、そう言って、おばさんの行動と、 ネコたちを見ていた。
そこにとっても太ったネコがやってきた。 ものすごく太っている。 そのふとった体をもそもそと動かして、 おばさんの足元に行った。
「あらぁ、太ってますね、妊娠してるのかしら?」 「ううん、太ってるのよ、ただ。 この辺りのネコはみんな去勢しているから。 ちゃんとしたのよ。」 「そうなんですか…それはよかったです。 そうか…じゃ、ただのふとっちょさんかぁ。 でも、のらネコでも太っているんですね、今どきは」 と、私が笑うとおばさんが、こう言い出した。
「このネコは…たぶんだけど、飼いネコだったけど、 捨てられたんだと思うの。人間慣れしているから」 確かに、おばさんに近寄り、 毛をすいてもらったりしている。
「ここに来たときには、もう太っていたのよ」 「太ったから…捨てられたのかなぁ? あんまり食べ過ぎるから?」 「どうかしら…どっか引っ越しでもしたんじゃ ないかと思うけどね。この辺りの人は 平気でそんなふうにするからね」 「ひぇ〜、捨てネコですか…多いんですか?」
すると、おばさんは、こう言った。
「多いわね。ここだけじゃないから。」 「えっ、違う場所にもいるんですか?」 「いるわよ、違うところにも。 飼いネコが捨てられることもしょっちゅうよ。」
どうやら、おばさんはここだけでなくて、 違う場所のネコたちにもごはんをあげているようだった。 だから、こんなにいっぱいの荷物を持っているのだ。 おばさんが持ってきているえさ袋は、 ネコごはんのカリカリや、ネコ缶などが いっぱい入っていた。
そこに、もう1人のおばさんが、 ネコさんのごはんを持ってやってきた。 どうやらこの2人は知り合いらしく、 簡単に挨拶をして、ネコたちの様子を見ていた。
先のおばさんが、くるりと私の方を見て、 こう言った。
「今どきはね、捨てるのは簡単なのよ。 いらなくなったら、ポイなのよ。 犬もネコも。おもちゃみたいに捨てるのよ」
私は、黙っていた。 ことばがなかったからだ。 そういえば、以前もそんなネコたちに 出会ったことがある。 みんな引っ越すときに捨てていくと、 近所の人が言っていた。
私は、やっと、 「捨てるのは…あんまりですね… 無責任すぎます…」と答えて、 おばさんたちにお礼を言って立ち去ろうとすると、 後から来たおばさんがこう話しかけてきた。
「ねぇ、子ネコ殺しの作家の話、 今話題になってるでしょ? あなたあれ、どう思う?」
私は突然のいきなりの質問に戸惑ってしまって、 少し考え込んでしまった。 (詳細は→「「子猫を殺している」坂東眞砂子さんのエッセーが波紋」 どう答えようかと、迷っていると、 そのおばさんはこう言った。
「殺すのは悪い、って言うのは簡単よ。 でもね、こうして、生きて捨てるってのも どうなのって思わない?」
私は、大きく頷いた。
確かにその通りだ。
現実には、こうして、 簡単に捨てられるネコたちもいるのである。 そして、こんなネコたちは、 このようなおばさんたちの好意によって 生きながらえているのだ…
きっと、おばさんたちは、こうしてネコたちに 接しながらいろいろと考えることがあるに違いない。 怒りをもっていることもあるのだと思う。
私は、 「そうですね、その通りですね」 としか答えられなかった。
私は、おばさんたちに、もう一度 「どうもご苦労さまです。」と言って、帰ってきた。 ちょっと複雑な気持ちを持ちながら…
そういえば…「子ネコ殺し」、 どんなふうな決着がつくのだろうなぁ… 確かに「動物の子どもを殺すのはよくない」と、 正論を言うのは簡単だが、 現実には、飼っていたペットを、 生きたまま簡単に捨てる人たちもいるのだ。 どうなんだろう… 一番いいのは、違う飼い主をちゃんと 見つけてやることだと思うが… なかなかそうはいかないのか。
それと、帰る道々、 あのふとっちょなネコは、捨てられても 太ったままなんだなぁ…いっぱい食べるのかしら、 すると、捨てられてもたくましいんだなぁ… などと思ったりした。 もっとも、あのおばさんたち2人が ごはんをちゃんとやっているのだけど、 あげすぎか?
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