2006年02月22日(水) |
「100円くれない?」おばさんの過去 |
実は、昨日、歯医者が終わって帰る道で いつもの「100円くれない?」と声をかけてくる ホームレスのおばさんにも会ったのだ。 (おばさんについては、詳しくは↓ 「100円おばさん」)
あっ、100円おばさんだ! 久しぶりである。
冬は寒くしてないか、ちょっと心配していた。 今日は、街中のベンチにすわって、 ボーっとしているようだが、 遠目で見る限り元気そうである。
すると、おばさんの前を 自転車に乗った男性が通りかかった。 おばさんは声をかけた。
その自転車の男性は、驚いたようだったが、 自転車を降りて、お金を渡していた。 たぶん、その男性に 「100円、くれない?」と 声をかけたのだと思う。 おばさんは、そのお金を受け取ると、 大事そうにバックの中にしまった。
今日のおばさんは、白いダウンコート (下の方がかなり汚れている)に、 スカートをはき、厚手の靴下、 中国製のぺたんこの靴を履いていた。 ベンチの上には、スーパーの袋がいくつも 置いてあったが、何が入っているかまでは、 わからない。
私は、おばさんに近づき、 「こんにちは」と挨拶し、 100円を渡した。
するとおばさんは、こう言った。 「もう100円ない? 私一銭も持ってないの。 食べるものも食べられないよ」
私はさっき男性からお金を受け取ったのを 見ていたし、もう100円あげたので、 「今日はもう終わり」と答えた。
そして、いつもの通り話しかけた。 (私は何度かおばさんと話をしている)
「今年の冬は寒かったでしょう? 大丈夫だった?」 「うん、大丈夫だったよ。 でも、2回降った雪のときには大変だったよ」 「風邪とか、引かなかった?」 「うん、大丈夫だった。全然大丈夫だよ」
「冬は、どこか暖かいところがあるの?」 「ううん、ないよ。いつものところ。 でも、暖かくしているので大丈夫だよ」
おばさんは、冬でもどこかであたたかく 過ごしていたらしい。 そういえば、とても元気そうだ。 よかった、よかった。
そこで、私は、ちょっと 失礼かなと思ったけど、思い切って、 おばさんにこう話しかけた。
「ねえ、おばさん、おばさんって、 若いときとてもキレイだったでしょう?」
すると、おばさんはちょっとびっくりした顔をして、 そして、ちょっとはにかんでこう答えた。
「わからない… 自分のことはよくわからないからね」
そこで、私は続けてこう聞いた。
「私、いつも、キレイだったんだろうなと 思っていたの」 「……どうかな……」
そう答えて、ちょっと置いて、 おばさんは、こう言ったのだ。
「あのね、私58才まで働いていたの。 今ね、66才になったばかりだけどね、 58までは働いていたのよ」 「えっ、おばさん、66才なの? 私、50代かと思っていたよ。 とてもそんな歳には見えないね。」 「そう?でも66才だよ。 なったばかりだけどね」
そう言っておばさんは笑った。 おばさんは、顔がふっくらとしていて、 目鼻立ちもよく、肌もつやつやしているし、 私にはとても66才には見えなかった。
それはさておき… おばさんは、なんと58才まで働いていたのだ。
「何をやっていたの?」 「あのね、製本していたんだよ。 製本工場で働いていたの…」 「そうなんだ、で、そこをやめたの?」 「うん、定年になってね…。 でも、今でも私、働いているんだよ」
えっ? 今でも働いている?
「えっ、今も働いているの?」 「うん、働いている」 「そうなの。何をやっているの、今は?」
すると、おばさんは口を濁した。 まさか、「100円、くれない?」と 頼んでいることではないだろう…
私は答を待ったが、おばさんは、 答えたくないようだったので、 深追いしないことにした。 ともかく、おばさんは何かを しているらしい。
また、いずれ機会があったら聞いてみよう。 あたたかくなれば、また会えるしね。 そう思って、私はおばさんに 「寒くしないようにね。 話してくれてありがとう、またね」 と挨拶して別れた。 おばさんも、 「うん、またね」と言った。
おばさんが、元気でいてくれて嬉しかった。 来週の歯医者の日に、また会えるかな?
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