2006年01月05日(木) |
ホームレスのおばさんと再び出会う。 |
今日は、歯医者の日だった。 実は、暮れから歯が痛くなっていて、 ついに我慢ができなくなったので、 急遽行くことになったのだった。
歯医者嫌いの私にとっては、 年始から憂鬱であったが、痛みには勝てない。 どうやら、以前治療してもらった歯の調子が よくないようなのだ。
イヤだなぁ… と思いつつ、しぶしぶ用意して出かける。 今日はものすごく寒かったので、私はいつもより 大目に着込み、自転車に乗った。
その向かう途中のことである。
あっ… 「100円、くれない?」おばさんだっ! 誰かをみると必ず、 「100円、くれない?」 と話しかけるホームレスのおばさんを 見つけたのだ。 「おばさんとの始まりはこちらから」
冬空のビル街の一角。 その表通りに面したビルのスペースに なんと、おばさんはいたのだ。 荷物を持ち、何かごそごそとしている。 あのビルのスペースで何をしているのだろう… なんだか、上着を脱いだりもしていたな。 寒くないのか…
気になったが、 歯医者の予約の時間があったので、 そのまま素通りして歯医者に向かった。 ああよかった、元気だったのだ…と思いながら。
で、歯医者で治療。 今日の治療は、簡単な処置で、 「少し様子を見よう」ということになった。 私は「大丈夫、痛まないか?」 少し不安に思いながら、自転車に乗り帰ってきた。 そして、おばさんがいたところに さしかかったとき…
なんとっ、 おばさんはまだいたのだ!
私は少し離れたところから おばさんを観察した。
おばさんは、 少しばっちい毛糸のセーターを着て、 その上に白いっぽいコートを着て、 厚めのスカートをはき、 その下にズボンをはき、 スーパーの袋を3つ、 リュックのようなバックを1つ、 その他小さなバックを1つ持っていた。 そして、やや汚れた毛布の上に それらを置いていた。 (その毛布の上に上がるとき、 おばさんは靴を脱いだ) それが全財産のように見えた。 その荷物をごそごそとさぐっていた。
私は、おばさんに話しかけてみることにした。
「こんにちは、今日は誰かに 100円もらえた?」 「誰からももらってないよ、 ね、100円、ある?」
本当かどうかわからないが、おばさんは、 そう答え、いつものように 100円、くれないと言った。 私はおばさんに100円を手渡した。
すると、おばさんはさらに、 こう言った。
「私ね、今日は一銭も持ってないの… もう100円持ってない? ホントに今日は一銭も持ってないんだよ、 もう100円くれないかなあ…」 「もうないの…100円」 と私は答えた。
するとおばさんは、荷物の中から、 大きな黒いビーズのサイフを取り出して、 私があげた100円をしまった。 見た目はキレイなキラキラしたお財布だった。 ちょっと意外な感じ。
そして、そのお財布に 100円をしまうとき、 間違いなく、ちゃりんと音がした。 私は「一銭も持ってないのはウソだな…」 と思った。 おばさんは、嬉しそうにニッとした。
「寒くない?」 「寒いよ」 「いつもどこで寝るの?」 「路上だよ。いつも。」 「近くなの?」 「うん、近く…」 「今日はここで寝るの?」 「ううん、違うとこ、公園とかね。 まだ夕方だから、ココにいるの」 「何してるの?」 「休んでるの」 「寒くないの?」 「寒いよ」 「着るものとかあるの?」 「うん、そんなのはあるよ」
どうやら、着るものはあるらしい。 そういえば、今日もあたたかそうなものを 一応着ている。 そして今、おばさんは休憩中だったのだ。
「じゃ、風邪なんてひかないようにね、またね」 と言って私は別れることにした。 おばさんは、私を見上げたが 何も答えなかった。
しかし、 この寒空の下、どこで寝てるんだろう。 段ボールのお家でもあるのか? でも、そのわりには、 おばさんは元気そうだ。 荷物も増えているし… きっと、たくましくおばさんは 生きているのだ。 きっと、おばさんなりの 生きる知恵があるのだ。
今日は寒い… あたたかいところで眠りにつけますよーにと 思いながら、帰ってきたのでした。
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