暴かれた真光日本語版
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2004年11月11日(木) 1996仏議会とセクト(6)-(8)

461 1996仏議会とセクト(6) 2004/10/08 21:53

 ところで、前述したようにこの報告書は実名でセクト団体を公表している。セクトは、潜在的に社会に危害を加えたり集団自殺したりする可能性があるにしろ、すぐに行動を起こすわけではない。しかし、マインド・コントロールの被害を出していることは確実である。 だから、その予防には団体名を出して注意を喚起する必要がある。
 リストには日本の宗教団体も数多く名前を挙げられている。すぐ、フランスはキリスト教だけが優遇されるから、日本の宗教なんか邪教で冷遇されるんだ、という見当外れをいう人もいるが、実態は決してそうではない。
 先にあげた宗務協会と修道会は、免税措置などが違うのであって宗派による違いではない。各伝統宗教側でも全国連盟があり当局の話し相手になっている。創○学会が加入しようと策動したフランス仏教連合もその1つである。各宗派とも均等に対処されているのだ。
数多くの日本の宗教団体がフランスに進出しているが、リストアップされていないものも多い。リストアップされるには別の理由があるのである。
 挙げられた団体の中で、フランス国内の信者数が最も多いのは創○学会だ。日蓮正宗破門後の元信者への迫害や信者への締め付けが益々強くなっているために被害通報が相次いでいるからだ。なお、フランスでは創○学会は信徒団体ではなく日蓮創○宗とでも訳せる独立した宗教団体の形をとっている。日蓮正宗(大石寺)はまた別に、法人形態は1901年法のアソシアシオンだがフランスにもちゃんと存在している。リスト作成には宗務協会かどうかは考慮されていない。同じような教義を持らながら、日蓮正宗がなく創○学会が入っているのは、教義や儀式行事と関係ない基準で選ばれているからに他ならない。
 幸福○科学については日本人社会向けに派手に文書配布しているが人数は少なく、被害例もまだ出ていない。しかし、日本での実態を踏まえて判断されたものと思われる。
 S教真光はかなり被害例が出ているのと、ヨーロッパ大会で教祖に対して派手にヒットラー式敬礼などをして全体主義集団と見られているからである。
 他にも晴○教、霊○会、イエス○御霊教会、神○秀明会などが挙がっている。ただしフランスにおいて日本の宗教団体は、少なくとも現状では統一○会やサイエント○ジーのようにアンケート調査をして精神医学の知識を悪用して意図的に計画的にマインド・コントロールするところまではいっていない。
 しかし、ある種の行為は結果として、マインド・コントロールを起こしてしまう。こうして信者が増えることを布教の成果があがっていると勘違いしてはならない。しかも創○学会やS教真光のように指摘されても止めないとなると確信犯である。

■ 麻薬・エイズ並みの防衛策を
 さて先ほどのセクト判断10基準を見てもわかるように委員会はセクト問題の本質がマインド・コントロールにあることを強く認識し、その実態と対策に詳細な検討を加えている。これは日本の宗教法人法をめぐる論議では宗教団体内部の問題として看過された領域である。
 報告書は、<セクトの提唱する世界のヴィジョンが、フランスの各階層の人々の中にますます魅力を持って受入れられている>と述べる。そして、西洋社会の発展モデルの見直し、経済危機、家族構造の変動、さらにそこから生まれた欲求や願望に既成宗教が応えられないという背景を温床にして登場し、マインド・コントロール技術を武器に繁殖するセクトに立ち向かうには、麻薬に対するのに近い心構えが必要だという興味深い指摘を行っている。セクトは宗教、倫理、エコロジー、医学、文化、教育、自已啓発、性の解放といった様々な仮面を被って近づく。既成宗教の名前を使って巧妙なカモフラージュを施すことすらあるのだ。たとえば愛の家族は、キリスト教徒であると自称する。しかしその実は教祖モーゼ・ダビットの信者なのである。同じ事は、ヨーロッパの創○学会にもいえ、彼等は「日蓮大聖人の仏教」を標榜するが、会員が学ぶのは池田○作の著作、演説である。日蓮創○宗では創○学会幹部が聖職者になっている。フランスに日本仏教の馴染みがないために、多くの信者は自分たちが仏教を学んでいるのだと思い込み、創○学会に対する批判は仏教への批判だと誤解している。


462 1996仏議会とセクト(7) 2004/10/08 21:55

 なおかつセクトは敢えて強引な手段に訴えずとも、あたかも自分の意思で入信したかのように相手に思い込ませるだけの高度な説得の技術を持っている。オ○ムのように同意を得るために実際に暴力を振るうグループは、セクトとしてはむしろ例外である。しかしそこには見逃すことのできない危険性がある。なぜなら被害者はまた新しい信者を勧誘して加害者となる連鎖反応を呼ぶのだから。被害者が加害者になるというこのセクトのプロセスは、麻薬中毒者のやり方と似ており<セクトの勧誘員は『超越性の売人』と言える>と委員会は指摘する。
 対策提案でも、委員会は麻薬対策を念頭に置いている。すなわち、<セクトが呈する危険について国が、国民教育の一環として、公民教育の指導要領にセクト現象の検討を入れる。初等から高等のあらゆる学校施設において、毎年説明会を開く。政府がテレビ等でエイズや麻薬中毒の予防キャンペーンと同じように大々的な広報キャンペーンを行う。県ごとに信者の社会復帰をケアする専門官をおく……>
 オ○ム真理教は実際に麻薬を使用したが、それは、効果を早めただけで、マインド・コントロールは麻薬なしに、麻薬と同じ効果を起こすのである。そして人格は破壊され、場合によっては死に至る。社会復帰には、麻薬の解毒と同じような辛抱強さと行政を含めた周囲の協力が必要になる。
 一部からマインド・コントロール罪が提案されたが、最終的に委員会は、政教分離に関する1905年法第31条「個人に対する暴力行為や脅迫、あるいは仕事を失うかもしれないという恐怖、その人個人や家族、財産まで被害を受けるかもしれないという恐怖に個人を晒すことによって、宗教を実践するかしないか、宗務協会に所属するかしないか、宗教の費用を支払うか否か決めさせようとした者」や1994年3月以来適用されている新刑法第213−4条「無知の状態や弱者あるいは未成年者あるいは年齢や病気、身体的心理的欠陥、妊娠状態など特別な弱点が明白であるか、又は犯人が認知している場合、未成年者や弱者に対して極めて有害な結果を生じうる行為を行う、あるいはわざと行為を行わなかったとき」の罰則などで十分対処できるとした。
 また、同様に委員会は、セクト新法制定についても、セクト現象は多様で変化しやすく線引きが難しい。一歩間違えると、これは平等の原則、国家の信仰に対する中立の原則、宗教集会結社の自由を侵害する恐れがある。そして、何よりも現行法規の拡充と厳格な適用と強化で対処できるとした。
 代わりに、法律という融通の利かない物ではなく、臨機応変に対処できる、各省合同による首相直属のセクト観測所の設置と、宗務高等審議会という会計監査院や公正取引委員会に匹敵する監督機関の設置を提案した。後者の構成は、各種宗教の代表者10名、宗教の分野の権威者(被害者を守る会代表も含まれる)10名、関係省庁からの代表者10名ずつの30名で、現在宗務部がおこなっている調査や手続きをさらに拡充させ、あわせて中立度と効果を増そうというのが狙いである。この柔軟な姿勢を見ると、そもそも日本のような宗教法人法という1つの法律ですべての問題を扱おうとする考え方に、無理があるのではないかと思える。

■ 日本は「セクト天国」か
 この報告書の提案がどこまで実施できるかは予断を許さない。しかし、立法行政一致して報告書に賛成、そして「世論」のセクト認識を公認したという事実だけでも、画期的なものがある。
 宗教問題かどうかという論争に終止符が打たれ、セクトは宗教問題ではないと断が下されたため宗教弾圧だと非難される心配がなくなり、実名報道に対する名誉毀損訴訟にも安心して対処できるようになって、伸び伸びとセクト報道ができるようになった。
 いくら宗教問題ではないとは言っても、セクトはネオ・ナチ問題のように思想の問題でもあるのが対応の難しい所であり、公権力の介入には限界があるのも事実だ。また、公権力に過度に依存することは弾圧を生む危険がある。私は、まさにマスコミこそが先頭に立って被害を生まぬよう、未然に防ぐ役割を担うべき分野であると思う。
 この報告書が公刊された1月10日、民放TF1局は、ゴールデン・アワーにスタジオ討論とルポでセクト問題を扱った2時間にわたる特別番組を放映した。創○学会がフランスで運営するビクトルユーゴー文学館で案内嬢から池田○作の名が出た途端「セクトに注意!」とテロップが出るような日本なら偏向していると非難を浴びそうな内容だったが、視聴率52.3%、1干万以上のフランス人が見て、激励こそあれ抗議はほとんどなかった。


463 1996仏議会とセクト(8) 2004/10/08 21:56

 報告書がもう一つ具体的対策として挙げたのは国際協力だ。この問題は前々からEC委員会でも取り上げられている。セクトのロビーイングで決定が遅れているが、この報告書と政府・国会の支持表明は、プロセスを早めるに連いない。
 宗教ファナティックということで、イスラム原理主義にスポットが当たっている間に、一見するとおとなしそうな宗教の皮をかぶったセクトが静かに拡大し、とくに旧共産主義国では激しい勢いで浸透して、セクトが原爆を持つという事態が、フィクションではなくなっている。日本の宗教法人法審議で野党は拙速であると批判したが、認識が甘いと言わざるをえない。宗教法人対策はともかくセクト対策は急務である。
 報告書はセクトの莫大な財力に触れ、<多くのセクトが税法の『寛容』な国に進出しようとするのである>と記す。
 セクト問題が相変わらず宗教問題の枠内にとどまって政治の駆け引きの材料になっている間に、日本はまさに世界中のセクトの吹き溜まりになっている。
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(<>内は報告書の引用。ただし紙数の都合上一部要旨とした。またセクトの活動実態の例は報告書記載のものに限定しなかった)


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