2012年12月30日(日) |
『はだしのゲン』が語ること |
今年は世事に疎い筆者でも知っている名のある方々の訃報が多かった。25日に訃報を報じられた中沢啓治氏もその一人だ。 中沢氏の代表作である『はだしのゲン』は、原爆投下を6歳のときに経験した作者が、原爆が引き起こした数々の生々しい悲劇と、それにたくましく立ち向かい、ゲンの成長を描いている作品だ。漫画の発行部数で言えば、現在の人気漫画には遠く及ばないだろうが、読んだことがあるという人はおそらくどの漫画よりも多いのではないだろうか。 しかし、その評価は賛否両論といったところだ。昭和天皇に戦争責任があると批判しているからだ。これが左寄りの人に受け、右寄りの人には好ましく思われていない。 だが、中沢氏は左右の思想を意識してこの作品を書いただろうか。少なくとも筆者が感じたのは、戦争と、戦争を推進する思想への率直な批判を感じただけだ。
「踏まれても踏まれても真っ直ぐ伸びる麦のように強くなれ」。ゲンの父親から伝えられ、ゲン自身も何度も振り返る名言だ。つまるところ、中沢氏が伝えたかったのはこの心ではないだろうか。間違っていると思うことにはどんなに周りの風当たりがきつくても毅然と立ち向かえる、そんな強い心を持て、と。
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