友人に文芸談議に招かれて京都は三条の方に赴いた。喫茶店はこういった談議をするのに向いている。なぜなら日本で最初の喫茶店、カフェー・プランタンが開かれた動機が、文人や画家が芸術談議をできる場所が作りたい、というものだからだ。 話が弾む中で寄った喫茶店は2件。両方とも人気はないが風情のある細い路地にあり、骨董品が所狭しと並べられ、猫の店長が闊歩する店に、レトロな路線なのはいいが、なぜか追加オーダーができない店と双方特色深い店舗だ。昔の喫茶店ブームからそのまま残った店だと聞いた。古いものが当たり前のように残っているのはどこか京都らしい。
筆者にとって学生時代、喫茶店は縁遠い場所だった。何しろ飲み物だけで何百円も取られるのだから割に合わないと考えていたのである。 喫茶店の使い方を覚えたのは就職活動の頃だ。いくつもの企業を渡り歩き、次の企業に向かうまで時間があるときは喫茶店でよく休憩していた。机と椅子のある場所というのは都会の中にはなかなかないのだ。そこで喫茶店の飲み物代には場所代も含まれていることを初めて理解した。
誰かとじっくり話したいとき、ゆっくり座って休みたいとき、そこには喫茶店があってほしい。
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