日本文学者のドナルド・キーン氏がついに日本国籍を取得した。戸籍名は片仮名で登録されているが、「人を笑わせたいときに使います」と、キーン氏は「鬼(きーん)怒鳴門(どなるど)」と漢字名で書かれた名刺を持ち歩いているそうだ。「怒鳴る」と「鳴門」をかけて「怒鳴門」とするセンスは流石に日本文学の権威である。 日本人として外国の方に日本を終(つい)の棲家(すみか)に選んでもらえて大変誇らしい。国籍まで変えるということはお世辞や打算でできるほど軽いことではないのだ。
筆者も海外に滞在した経験が2度ほどある。2度目のカナダへのホームステイは1年に及ぶものだったが、帰る日が近づくにつれて、日本に帰る日が待ち遠しくなったのを覚えている。あの時は日本に帰り、家族に会い、友人に会うのが何より楽しみだった。 キーン氏の場合、米国にある家財をすべて処分して日本にやってくる徹底ぶりである。少し調べても彼の家族のことについては分からなかった。友人ならばむしろ日本に沢山いるようだ。会いたい人がたくさんいる場所だから、とは言い切れない。とにかく彼にとって日本は「帰る」場所であり、母国であるアメリカ合衆国は「行く」場所となった。
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