2005年09月14日(水) |
4『線路上の暴走』その3の日 |
今日、たまたま用事があって学校に行ったのですが、やたらたくさんの生徒を見かけまして「ひょっとして学校は今日からか!?」……とは思いませんでしたが(一応気になって調べていたので)、何でだろうと思っていると、何と今日は成績発表の日でした。 あまり混雑しているわけでもなかったのでついでに受け取ります。で、別に緊張するでもなく、用紙を開くと、春学期の授業は全部Aでした。今回は楽な授業が多かったし、苦手なフランス語も二回生の時におさらばしてますし。
卒業可能まで残り24教科! ……といきたいところですが、秋学期の最後あたりには、マスコミ関係の採用試験が結構重なっておりますでな。ひょっとしたらたくさん落とすかもしれません。
あとは自転車のホイールカバーが走行中にいきなりひしゃげた位しか書くことないので、何となく「ちょびちょび書いてますよー」という意味で、如何に“まほゆめ”の続きUp。 あと一息だ……! あと一息で最新章が終わるんだ!
4『線路上の暴走』その3
その後の乗客の移動はそれこそスムーズに済ませることが出来た。結局のところ、ギリギリまで押し込めても後ろ四両を要し、畏怖されるジェシカが簡潔に「何者かによって先頭車両に爆弾を仕掛けられ、ブレーキを壊された。これから車両を切り離して破壊処理をする」という説明によって乗客は一応の納得を見たようだ。 車両屋上に乗客達を誘致すれば、三両までに減らすことは出来ただろうが、如何に安全対策が施されているとは言え、ブレーキを掛けた衝撃で車外に乗客が放り出されないという保証はないため、乗客には絶対に屋上に出る、もしくは窓をあける等の行為は絶対にしないように注意しておいた。 ちなみに、車掌などの関係者は一人残らず殺され、遺体は用具室等に隠されていた。非常時の対処法を持っている従業員達がいないほうが成功率が高まるからだろう。
「じゃ、切り離しやスよ」と、コーダは連結部にある制御盤を操作した。それを行うのに暗証番号が必要なようだったが、コーダはそれをさも当然のように入力し、連結を分離する命令を出力する。 切り離した後も慣性の法則で、車両はしばらく離れなかったが、その後ゆっくりと離れていく。それまでコーダは、前方側の車両に乗っているリクとしばらく目を合わせたままで、やがて頷きあうと各々の車両の中に入っていった。
「いわれた通りのところを壊してきたぞ」 「お疲れ様ッス。次は俺の番スね」 最後尾車両の屋上に上がってきたジェシカの報告に、コーダは召喚した《シッカーリド》の身体にロープを結わえながら答える。そのロープの一端は列車に繋げられているのだろう、屋上から列車の後ろへと垂らされていた。 ジェシカの報告を受けずとも、彼女がしっかりと役目をこなしてくれたことは分かっていた。先ほどまで微かに残っていた魔導器の作動音 「自信はあるのか?」 「初めはありやしたけど、今は微妙スね。思ってたより一両増えたのが痛いス」 内容に反してあっけらかんとコーダが答える。便利屋として列車に乗っている人数は正確に把握していたが、詰め込むとどのくらいの広さになるかの計算まではしていなかった。車両は一両だけでも酷く重く、先ほどまででも成功確率は八割、今となっては三割もないと思っている。 「ま、ここでのブレーキに失敗しても、大分スピードは落ちるでしょうからフォートアリントンに付くまでには自然に止まっているでやしょう」 「それで……逃げ出すという選択肢は思い付かないのか?」 この車両を見捨てて、《シッカーリド》で車外に出ればそれでコーダだけは確実に助かる。だが、たった三割の成功確率に賭けて失敗した時、一番に危険が及ぶのはブレーキ役のコーダなのだ。 「俺は」と、コーダはジェシカを見据えて答えた。「“奴ら”とは違う。……兄さんに顔向けできない事をしてまで生き延びようとは思いやせんよ」 その毅然とした態度に、ジェシカは頼もしそうに頷く。 「その分なら失敗は無さそうだな」 ジェシカの言葉に、コーダは嬉しげに目を細めると、意気揚々と《シッカーリド》の御者席に跨がった。
「行こう、《シッカーリド》」 その声に応えて、《シッカーリド》は軽く節足を曲げ、跳躍する。ふわりと音のない離陸、そのまま空も駆けて行けそうな優雅なジャンプだったが、列車と結び付けられたロープが真直ぐに張り、それに導かれて、《シッカーリド》は柔らかく着陸する。 衝撃は予想以上に大きく、その揺れにコーダは《シッカーリド》の上から振り落とされるどころか維持できずに召喚獣《シッカーリド》が魔力に還ってしまうところだった。模しそうなれば、このスピードのまま地面に叩き付けられ、いくら運がよくても死ぬのとそう変わらない目にあっただろう。 しかしこれから《シッカーリド》に足を踏ん張らせなければならない。そうなればこの継続する衝撃は数倍に上がるだろう。《シッカーリド》の装甲がいくら強くとも踏ん張る脚も無事ではいられまい。 (だが、それから逃げるわけには行かない) コーダは大きく深呼吸すると、歯を食いしばり、《シッカーリド》と意識を同調させて脚を踏ん張らせた。 尖った節足が地面に突き刺さり、深い爪痕を付け始める。同時に、地面から跳ね飛ばされそうな衝撃が襲ってきたが、コーダは《シッカーリド》をなんとか大地にしがみつかせた。 地面を引っ掻く脚も無事ではいられない。少しでも強い制御力を得るために同調させた意識は同時に《シッカーリド》の足が感じている堪え難い痛みも拾っていた。凄まじいスピードが生み出す摩擦力に、《シッカーリド》の脚は声なき悲鳴をあげる。その体中に巻き付けられたロープも酷く大サソリの身体に食い込み、締め付けた。 「ふうっ……!」 食いしばった歯の間から、叫びにできない息が漏れる。だが、その行為は僅かながらに感じていた痛みを緩和させた。
(見守るだけ、というのも中々辛いものだな……) 最後尾車両の上からコーダと《シッカーリド》が身をはってブレーキを掛けているのを見下ろしていたジェシカは口中で歯噛みする。傍目から見ていても、《シッカーリド》の踏ん張りだけでは制動力が足りない。自分もどうにかしてその足しになってやりたいと思うが、その手段を持ち合わせていない。 (いっそ、前方で槍を突き立ててみようか) しかしそれでは車体がつんのめってしまい、列車転覆の危険が大きいし、槍を突き立てることで、線路を破損させてしまっては、それこそ確実に列車を横転させてしまう。 (何とかできないものか、何とか……ッ!) 手がかり、せめてヒント、閃きを求めて、ジェシカは辺りに視線を巡らせる。何か使えるものはないか、何かできることはないか。 そして、彼女は望み通りに閃いた。
屋上から階段を駆け降り、人込みをかき分けて、車両を切り離した地点まで戻った。そして、閉じていた扉を開き、そこから飛び込んでくる風を一身に受けつつ、外に首を出して、辺りを見回し、ドア周りを点検したりする。 (………見たところ行けそうだが、確信は持てないな……) 自分の中の冷静な部分がそう判定したが、深い部分ですでに彼女は既に決断していた。というより、やらなければ気が済まない、やらなければ後々後悔する、と直感は彼女に訴えかけていた。 本能的な判断に、疑念を抱くことなくジェシカは行動に移った。愛用の槍をもち、それを扉から外に突き出して、水平に構え、呪文を唱えた。 「届かざる手よ、我が意に沿い《伸び》て、我が敵捕らえよ」 すると、槍が淡い光を発し始め、光のシルエットがそのまま伸びていく。そして、伸びた槍の両端が線路の両側に切り立った崖に突き立った。槍は、車体に押し付けられるが、しっかりと設えられ、魔法で処理もされた頑丈な壁はびくともせず、槍を押しはじめる。槍の方は、僅かに軋み、しなったが、折れる心配は無さそうだった。 ガガガガ、という音と共に壁に突き立った槍が崖を引っ掻き、強大な摩擦力を発生させる。だが、あまりの衝撃にすぐに外れそうになり、支えているだけでよかったつもりのジェシカは槍の振動に耐えながら、槍の位置の補正に全力を注ぐことになった。素のままの筋力では耐え切れず、支えるために更に魔法で筋力を高めなければならなかった。 (……思ったより数段厄介だな) だが、まだ制御力が足りない。そこでジェシカは意を決して槍に魔力を送り込み、槍の長さを更に伸ばした。崖に突き刺さっていた槍が更に深く潜り込み、槍が大きくしなった。このままでは折れてしまいかねないので、ジェシカは槍を魔力で強化する。 筋力の強化、槍の高度の強化のために同時に魔力を制御し、格段に強くなった振動を抑えて槍を水平に保つ。これらのことを同時に行うには卓越した集中力と魔導制御力が必要となる。実際、ジェシカは魔力のバランスがいつ崩れるか、集中が途切れて、槍を衝撃に跳ね飛ばされるか、気が気でなかった。 だが、彼女がその危うい状態を保っていられたのは、ある事実が見えたからだ。
痛みを通り越すと何も感じなくなる、というのは絶対に嘘だ、とコーダは思った。制御力を高めるために、精神を同調させ、共有した痛覚が上げる悲鳴は際限なく大きくなっていく。 もう足先は削れてだんだんと短くなっていっている。魔力をその先に集中させて、自然治癒力とつま先の甲殻の硬度を上げているのだが、それでも気休め程度の効果しかない。とにかく地面にしがみついていることを考え、跳ね飛ばされず、ただ地面に爪をたてることだけに集中した。
----フォートアリントンで、また会いましょう。
かつて兄と呼んでいた男は言った。その言葉の中に、コーダがこの列車爆破の中で死ぬという可能性は含まれていない。だが、乗客を全員助けた上で生き残るという可能性も差ほど高くは見ていまい。 今は、とにかく彼等の言動にことごとく反発心が生まれる。生きるとあちらが決めつけるなら死んでも構わないくらいに思えるほどにそれは強い。 だが、それ以上に負けたく無い。死ぬことに意味は無い。あえて敵の言葉にのってでも自分に、そして周囲に意味のある行動をしてこそ、彼等に勝つことになるのだ。この場合、皆に意味があることといえば、今の自分の任務、乗客を全員救って生き残ること。 (そして、堂々と奴らの前に立ちはだかってやるさ) 訓練によって、焦りや動揺は極力抑えられている彼等だ。目論見通りに事が運ばなくても小憎たらしい余裕は消え去ることは無いだろう。それでも自分の意思を見せつけることにはなる。すでに決別したつもりだったが、彼等がまだ追ってくるというのなら、改めて突き放してやろう。 (そのためにはこの程度の苦痛なんかでめげるわけには行かない)そう考えると、今感じている苦痛もそれほどのものではないように思えてくる。否、実際に苦痛は減っていた。(スピードが、落ち始めた……!?)
一度、速度が落ちはじめると、目に見えて制御力の効果が現れ始め、完全に停車するまでにそれほど時間は掛からなかった。 わっ、と完成を上げて乗客達が狭い車内から外に出てくる中、張り詰めた糸がほつれるように、《シッカーリド》の魔導制御が解けて魔力に還っていく。相棒の支えを失ったコーダは、そのまま地面に落下し、その場に仰向けに転がった。 谷を出たところで止まったので、空は谷に切り取られること無く視界一杯に広がっている。彼に降り注ぐ、少し強めの太陽光は、力を使い尽くして些か熱をも奪われたコーダを暖めた。 その視界の中に、知った顔が覗き込んで来た。 「……ジェシカさん」 「よくやり遂げてくれたな」と、彼女はコーダを労いつつ隣に腰を降ろす。 「はは、意外と何とかなるもんスね」 あれから何の仕事も無かったはずだが、ジェシカの声はどこか疲れが混じっていた。どう計算しても、《シッカーリド》のブレーキのみであそこから速度が落ち始めたのに納得がいかなかったのだが、おそらく見えないところで彼女が手伝ってくれていたのだろう。 「俺達の仕事はこれで終わりス。後は兄さん達を待ちやしょう」 そう言って、コーダは疲れの導くままに目を閉じ、寝息を立て始めた。
web拍手レス(本気で画像が自前でイケるレンタルCGIのアクセスカウンター探してます。復旧の兆し全くないし/汗)
>「「魔法使いたちの夢」、すごく面白かったです! 時間無視でわくわくして一気に止まらなくなって」
途中で切れた……ようですね。 でもあなたの愛は確かに受け取ってますよッ!?
極稀に「ハマったー!」「一気読みしたー!」って言ってくれる方がいるのですが、何か僕の小説って割とピーキーなのかもしれません。あまり知名度は高くないですが、ハマってくれる人はハマってくれるって感じで。 前まで、「負けてない」って思える小説でも知名度が高くて人気もある小説をみると嫉妬を覚えたのですが、最近はそうでもないです。更新が滞っている今、そんなぜーたくは言えん。 新しい読者を開拓しようと登録する検索サイトを増やそうと思ったこともあるのですが、更新のとどこっているサイトを登録するのも気が引けますしね。 お茶を濁そうと何度公募用の例の小説を公開したいと思ったか。いや、今も思っているとも。それにアレは落選してからゆっくり公開したいとおもってますので。
それにしても再版までいった「人なる」本はうらやましい。あれは儲かっただろうなぁ。(←お金か!? お金が羨ましいんだな!?) ま、というよりお金を払ってでも読みたいっていう人が沢山いることでしょうか。 へいじつやのファン達が集うコミュニティもネット上に現れたそうですよ? 嗚呼うらやましいよーうらやましいよー(駄々)。
でも実は“まほゆめ”第1部、活字の本になってたんですよ? カナダに行く前に『“まほゆめ”単行文芸誌計画』というのがあったのですが作者は海外逃亡するわ、企画者&イラストレーターは就職活動に入るわで結局、うやむやになってしまいまして。 それでも維持で手刷りし、ホッチキス&ガムテ綴り、しかもところどころフォントがバラバラであるものの、中にイラストは入っていませんが、表紙にリクのイラストが入った、数冊の“まほゆめ本”が製本され、内々に配られたそうな。ちなみに僕も一冊持ってます。
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