呪縛の蝋・あとがき
というわけで、サークルの文芸誌『クリエイター』に載せるために書いた似非怪奇ミステリーもどき短編『呪縛の蝋』でした。
【お題について】
今回は、少々縛りがありまして、キーワードとして【お前も蝋人形にしてやろうか?(台詞)】【赤ペン先生】、そして条件として【男キャラ2名以上出すこと】というものがありました。
男キャラ2名というのが実はやおいねらいで、頭に「美形の」がつくらしかったのですが、一応若いころの赤羽教授と伊戸部礼二は美形という脳内設定があるので、まあ良しとします。
「お前も蝋人形にしてやろうか?」というデーモン小暮閣下の名台詞は赤羽教授が回想で出てきましたね。この台詞をそのまま利用して「蝋人形魔術」というこの小説の根幹を成すモノができたのですよ。
「赤ペン先生」の使い方はかなり秀逸だったと思います。前編だけ見ると、赤羽教授のあだ名というだけなのですが、後編の謎解きではこの言葉がかなり重要なヒントとなるのが分かるはずです。 色覚障害については、いろいろな症例があるそうですが、赤羽教授のパターンは創作ということでご理解ください。
【キャラについて】
今回は、謎解きに絡まない場面等、実験的に少しコミカルな要素を含ませて見ました。 本来主人公・千鶴は特殊語尾を使わないのが僕の美学だったのですが、今回は語尾を延ばすほにゃららしたキャラになってしまいましたし、
そして微妙に便利に使わせてもらったヒロイン・雛子はいかにもトロそうな主人公にはツンツン(後に微妙に変化)して、真摯な赤羽教授(オジサマ)にはデレデレするという設定にしたつもりなのですが、肝心の赤羽教授との絡みがなかなか成立せずに終わっちゃいました。(つーか、今見てみたら雛子がオジサマに話しかけてる場面、二つしかないよ!)
ですが、今回光ったのは脇役ですな。 コードネーム『ガキ大将デカ』井上巡査、とか。 コードネーム『実は隠れ親バカ』三沢芳雄(雛子の父親)とか。
特に井上の出てくる場面は書いててとても楽しかったです。
【怪奇ミステリーというジャンルについて】
まー、蝋人形というギミックが先にたったこともあり、いろいろ触発されるものがあって怪奇ミステリーに挑戦いたしました。
もどきでも一応ミステリーの形にしたつもりですが、なかなかストレスがたまりますね、これ。「言いたいんだけど、まだ言えない」みたいな(笑)。 でもあまり最後までわけの分からないまま引きずるのもアレなんで考察を主にやっていた中編では時々ヒントっぽい事実や、伏線も張ったりしましたし、千鶴たちが考察を述べる場面では、「どこまで書いたらいいのか」とか非常に気を使いながら書きました。
ま、短編ミステリーなんでちゃちいモノですが、とっておきだったのが、「なぜ伊戸部礼二はあのような犯行に至ったのか」「だれが伊戸部礼二の部屋の偽装工作を行ったのか」の2点ですね。 「失踪した六人の村娘の行方」に関しては、大体想像のついた方も多いんじゃないかと思います。
謎解きの場面、「やっと喋れる〜!」と、私は気持ちよく書かせていただいたのですが、読者のみなさんはご理解いただけたでしょうか? それだけが心配です。
【エピローグについて】
僕は今まで、どの作品にもキャラクターが作中で見せていた迷いに答えを出し、後日談等、明るい“これから”をにおわせるエピローグを必ずつけてきたのですが、今回はその前に片付いてしまったので、あえてあそこで終わらせていただきました。 かなり最終段階まで翌年4月に雛子が千鶴の大学に進学してきて、挨拶がてらに後日談を語る場面をプロットの中に入れていたのですが、何か書きたかったことが全部その前に持ってきてしまったために消滅してしまったのでした。
【参考文献】 「中村のきまぐれ法医学」 URL:http://www.kacho.ne.jp/hobby/legal-med.htm
「屍蝋(Wikipedia)」 URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E8%9D%8B
「一度見たら忘れられないミイラ・ロザリア・ロンバルド」 URL:http://www.nazoo.org/phenomena/rosalia.htm
【これからの執筆予定について】
今年に入ってから『生と死の狭間に』『呪縛の蝋』にばかり、執筆時間をとられ、メイン小説である“まほゆめ”をほったらかしていたので、これからしばらくは“まほゆめ”に集中していきたいと思います。 とりあえず8月中に一話アップしたいですなー。
では、短編とはいえ少々長いこの小説に最後まで付き合っていただき、まことにありがとうございました! ご意見ご感想等、ございましたらいつもどおり、掲示板、もしくはメールやweb拍手メッセージにてよろしくお願いいたします。
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