2018年11月06日(火) |
日の名残り / カズオ・イシグロ |
代替わりした屋敷の主が留守をするあいだ、老執事は短い旅に出た。 それは いままでの人生の回顧録であり、自分の存在を確かめる旅でもあった。
古き良き時代の英国、長年仕えた主人への敬慕、執事という自分の職業の規範ともいえる亡父への思い、今さらだが淡い思いを寄せていたと思える女中頭とのこと、お屋敷で催された重要な外交会議の数々・・・すべては遠い過去、過ぎ去ったことではあるが、老いを感じるようになってもそれらの日々が一層輝きを増して胸に生き続ける。
旅の最後のほうで知り合った男が夕方が一日でいちばんいい時間だという。 ゆうがたは、一日でいちばん楽しめる時間なのかもしれません。後ろを振り向いてばかりいるのをやめ、もっと前向きになって、残された時間を最大限楽しめ。
それはタイトルの 「日の名残り」に通じる。
図書館で予約していて、借りるのに一年もかかった。 おして他の予約本に比べたら番号がなかなか進まなかったので、ノーベル文学賞を受賞するだけの作品だから難しいのだろうか、読みにくいのだろうかと、構えて読み始めたがそうでもなかった。 主人公の一人語りは時にくどいと感じることもあったけれど、ノーベル賞に値する作品なのだと改めて思った。
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