2016年10月20日(木) |
雄気堂々 斗牛を貫く / 城山 三郎 |
寒々とした行灯の灯の下で、横浜焼打ちという暴挙を企てていた若い頃の渋沢栄一は、無名の反体制の一青年であった。渋沢自身の言葉を借りれば「血洗島の一農夫」でしかない。その「一農夫」がその後の動乱の中で成長し、受誦した詩の一部のように「雄気堂々」の人生を志していく。
渋沢は薩長土肥いずれの藩閥出身でもなく、維新に活躍したわけでもない。それでいて、いわゆる明治の元勲と肩を並べ、近代日本を築く最高の指導者、最大の経済人になる。 それも雄気堂々 であって、後暗いところはない。
これは、ひとつの人格形成の物語であると同時に、国家形成の物語ともいえる。
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