著者の祖父がモデルの物語。 生死をテーマに主人公である鉄砲屋江口稔の生涯が描かれている。 物語は、まさに主人公・稔の死の場面で始まり、近親者の死、初恋の人の死、親友たちの死などを経て、稔の目を通して、(時に村で火葬場の仕事をしている友人、清美の口を)通して著者自身の生死観が綴られている。 人の命はどこから来て、死んだ者はどこへ行くのか。ふとしたときに湧き上がってくる懐かしい感じは何なのか。 最初の死の場面は、全部読み終えたあとにもう一度読むと死ぬ事は怖くないような気がしてくる。
大阪に収められた骨で作った骨仏を祀ってある一心寺がある。 私の父も葬式はせんでいい、墓もいらん、と常々言っていたので一心寺に骨を納めて今は骨仏になっている。 参拝する人の絶えない賑やかなお寺で、いつも線香とロウソクの炎が揺らめいている。 そして 骨仏は白く黙して参拝客を見ているのだ。
線香の 種火もらいて 骨の寺
振り向けば 飛行機雲の 骨の寺
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