2016年03月19日(土) |
与楽の飯 澤田 瞳子 |
副題 「東大寺造仏所炊屋私記」とある通り、 奈良時代、聖武天皇が命じた東大寺大仏造営事業に役夫として徴用されてきた仕丁たちの食事所での物話。
主人公は近江国高島郡角野郷から選ばれて召集されてきた21歳の真楯と、ちょっと謎な造仏所炊屋の炊男(かしきおとこ)である宮麻呂が中心で話しは進む。
きつい作業をしながら楽しみなのが飯場でとる食事。 真楯たちの働く作業場の炊屋の炊男である宮麻呂は料理の腕がよく、 すっかり評判になっている。 大仏、毘盧遮那仏の鋳造が当時いかに大変な大事業であったかと、 今更ながら痛感する。 そして主人公も次第に仏とは何かに気付いて行く。
仏はいると同時におらず、おらぬと同時にいずこにも存在する。
以前読んだ
『天平大仏記』 澤田 ふじ子 『国銅』 帚木 蓬生
と 似通った物語で、やっぱり私はこういう物語が大好きなのだと、改めて認識したけれど、現代に伝わるあの偉大なる廬舎那仏はただ静かに座するのみ。
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