読書記録

2004年01月12日(月) 生きる             乙川 優三郎

藩主が身罷ったときに後を追うというか追い腹をするのが忠誠の証とか・・
まして重用されたものならなお更という中で、国家老から固く禁止され誓約分まで書かされて藩主亡き後の藩への忠誠を求められる。が 人の噂はそんな石田又右衛門を恩知らずとか腰抜けとののしる。他家へ嫁いだ娘からも義絶され 父のかわりに後とり息子が果てる。妻も病気で失いたった一人になってしまい、わが身もこれまでと思うがうらみつらみを文にしたためて果てようと思ったときおのれの小ささに気づく。胸の内を文字にしてみると恨みの正体が見えてきてその薄さに気付かされたのだった。最後に残った婢のせきに亡くなった妻が言ったなにげない言葉を聞く。
「何を幸せに思うかは人それぞれだと、たとえ病で寝たきりでも日差しが濃くなると心も明るくなるし、風が花の香を運んでくればもうそういう季節かと思う。起き上がりその花を見る事が出来たらそれだけでも病人は幸せです。」


安穏河原
昔は貧乏から娘を遊郭へ送らなくてはならないことが多くあった。武士という身分であっても浪人の身となればそういう話もありうる。そんな親がお金を貯めて知った男に一晩 娘をたくす。そして様子を尋ねる。何となくすっきりしない話だ。

早春
下級武士の主人公の家に奉公に来た心やさしい女中を思う。
身分の違いから一緒にはなれなかったが、老いてふと思い出して散歩の途中に家を捜す。確かにこの女人だと思うのだが幸せそうな女は「人違いでしょう・・」と言う。早春の頃である。


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