日が沈んだ頃、朝の駅まで送ってもらった。
何を話したらいいのか判らなくて 前を行く車のテールランプを数えていた。
片方が二重瞼で反対が一重だとか 左右で目の大きさが違う男は、根っからの浮気性だって 人相手相の勉強をしているという同僚が言ってたっけ。
…あんた正しいかも。 自分の身をもって体験してしまった以上、納得せざるを得ない。 左目が一重、右目は二重瞼の男。 運転中の横顔は、左の一重瞼しか見えなかったけれども。
浮気を繰り返す男。 それはよほど特殊な存在なのだと思っていた。 だけど。 ごく普通の顔をして 私の隣で煙草を吸いながら運転している男がそうなのだ。 たぶん都会の雑踏ですれ違っても 周りの人間との区別をつけることはできないほど、普通の男。
そんなもんなんだろうか。
何より自分がそんな浮気男と関係を持ってしまったことが どうにも実感できなかった。
かなり後悔していた。
「また逢えるかな」 聞かれて答えを曖昧にしたのは もう二度と逢わないだろうと考えていたからだった。
だが、予測は裏切られた。
泥沼が始まった。
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